英雄とパンドラ
(異変 SideL)


 
モンスターの姿を見かける事はそう珍しい事ではない
モンスターが移動している最中なのか、幾体かのモンスターが固まった集団が移動する姿を見かけることも、そうある事じゃないが、驚く程の事でも無い
嫌な話だが、モンスターは身近な存在
街の外へ出ればすぐにでも見かける事の出来る存在だ
だが………
「モンスターの集団?」
ラグナは報告された事柄に首を傾げる
「それが尋常ではない数のモンスターが集まっていまして………」
ラグナへ向かい兵士の一人が報告しながら手元で操作し画像を呼び出す
慌てたような兵士の声と、海、それから荒野が映る
急速に視界がズームしぼやけ
『警戒態勢を取れ』
悲鳴の様な声が聞こえる中で、画像が焦点を結ぶ
赤土の覗く荒野の向こうに蠢く何かの姿が映し出される
「モンスター、か?」
モンスターの集団にしては、規模が大きい
「良く見ててください」
今度はゆっくりと、映像がズームされていく
「………なんだこいつ等」
映し出されていく無数のモンスター
まるで“月”からモンスターがこぼれ落ちたあの時の様だ
「確かに尋常じゃねーな」
モンスターの集団がゆっくりと動いている
「どうしますか?」
兵士の問いかけに、ラグナは映像から視線を離す
「警戒態勢は既に取っているんだろ?」
ラグナの問いかけに、無言の肯定が返る
「なら各方面に警告と、もしもに備えておいた方が良いだろうな」
この辺りが危険地帯である事を各方面に知らせる必要がある
それと不用意にその辺に誰かが近づく事も阻止しなけりゃならない
そして、もしもの場合
このモンスターがこのままどっかに消えて行くなら、それはそれでまぁ、仕方がない
だが、コレが集団でどこかに押し寄せる様な事があったら拙い
どんな動きをしたとしてもすぐに対応出来るだけの準備を各地で整えておく必要がある
「それで、コレはどの辺だ?」
当たり前のラグナの質問に、兵士の身体が微かに揺れる
分かり難い動揺―――
ラグナは映し出された映像へ視線を落とす
エスタの東側に良く在る荒野
「………ルナティックパンドラです」
躊躇う様に幾度か唇を動かし、漸く兵士が告げる
ラグナ達の会話にそっと耳を傾けていた人々が一斉に振り返った
部屋の中の空気が強ばる
「ルナティックパンドラ?」
映像にはゆっくりと蠢くモンスターの姿が見える
ルナティックパンドラはモンスターを呼び寄せる装置だ
ボロボロになったそれは、国外の声に押されてそのまま遺跡として放置されている
ラグナは勢いよく席を立つ
「キロス、ウォードも呼んでくれ」
「………向かわれますか?」
秘書官の一人が強ばった声をかける
「そりゃーな」
「解りました、何かありましたらすぐご連絡下さい」
軽く手を振る事で返事を返すと、ラグナはエスタ軍本部へと急いだ
 
 
 
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