英雄と伝言
(資料 SideS)


 
バラムガーデン資料室
ガーデン内の上階に位置するこの部屋には、ガーデンが集めた様々な資料が纏められている
かつてSeeDは与えられた任務に疑問を抱くことは許されなかった
ただ任務の遂行のために動いてはいた
それと同時に、任務遂行の際に入手した情報は全て報告する義務があった
仕事を受ける際には、様々な情報を元に状況を判断する必要がある
どんな些細な情報であろうと、その情報が必要となる可能性がある
バラムガーデンが稼動してから今までのデータは、全てこの場所に保管されている
かつては情報の機密性を保持するために立ち入り禁止だったこの場所は、現在はSeeDならば許可さえ取れば誰でも使うことができる
バラムガーデンの歴史は浅い
だが、最近のものなら大国にも引けを取らない情報が集まっているはずだ
あの場所
廃棄処分となるはずの情報の中に記されていた扉
扉に刻まれていた紋章
そして、ドールからの帰国の足で、あの場所に現れた“ラグナ”
そして何よりも………
紋章を確認するために置いた手
何かに反応するように中の機械が反応した
手を置いた場所にスイッチのような仕掛けは無かったことは確認済みだ
機械は動いたものの、ラグナが言うように鍵が無いためか、扉は開かなかった
扉に刻まれていた2つの国の紋様
扉に刻まれていた鍵穴らしきものは2つ
普通に考えるならば、刻まれた紋様―――エスタとドールに、鍵があるはずだ
あの場所でラグナが手にしていたのはドールで“借り物”だと言った剣だ
提示された情報を組み立てれば、推測は簡単に成り立つ
もう一つの鍵はエスタにある
ラグナが鍵を手に入れるのは比較的簡単だ
スコールの手が端末を操作し、記録された紋章のデータを呼び出していく
ドールの紋とエスタの紋に似た紋様
そして、ドールの施政者の家紋
もう一つの紋様………
エスタにあるどこかの家の家紋だというのなら、ここのデータベースには存在しない可能性も高い
スコールが見つめる中で、様々な記号が現れては消える
手が止まる
同じではないが似た形
情報が表示される
刻まれた“エスタ”の文字
手を動かした拍子に画面が切り替わる
画面に現れた新たな紋様
輪郭のはっきりしない不鮮明な紋
表示された情報には最近の日付が刻まれている
提出者は“ゼル”
あの場所なら、似た紋様があったとしても可笑しくはない
そう思いながらも、スコールの顔が曇る
ドールとエスタ、そしてあの場所を結ぶのは“セントラ”
あの場所がセントラに関係している事は確実になった
だが、だからといって
「関係のない事だ………」
依頼で触れる機会が多かっただけで、セントラの事は何も関係が無い
情報を探すスコールの手が止まる
画面にセントラの文字が光った
 
 
 
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