英雄と少年
(おまけ)


 
「めずらしいですね」
訪ねてきた客人の姿にフィーニャは淡々と告げる
「呼び出す相手をお間違えになった訳ではございませんよね?」
「………今日はあんたに聞きたいことがある」
フィーニャの言葉にスコールが不機嫌そうに言う
「聞きたいこと、ですか?」
スコールの言葉にそっと首を傾げて見せる
「バラムで見つかった遺跡の事だ」
バラムの遺跡
考える迄も無く“彼等”が居たという場所の事
「先日バラムガーデンが発見したと発表された遺跡のこと、ですね?」
現場でお二人が鉢合わせた事は聞き及んで居る
エスタの調査員とSeeDの一人に接触が有った事も聞き及んでいる
あの方ではなく私に聞きたい事
それはあの方には聞くことの出来ない事でしょうか?
それとも………?
「そうだ」
「エスタの管轄に無い遺跡の事は良くはしりませんが、何か気になる事でも?」
あの遺跡の事は、私は知らなかった
他の者達へと話を聞いても知っていると答えた者は居ない
物見高く出かけた学者の一人によれば、セントラ時代よりも大分後の時代の物だという話
時代に関する話については幾人もの学者達が同じ事を言っている筈
「あの場所で争いがあった、等と言う記録は残っていないか?」
争いの記録?
ああそう言えば、争い破壊された跡が残されている
そう発表されていましたね
「その辺りについては私の管轄外ですが………」
「エスタの歴史は古いと聞いている」
遺跡の場所は直接の行き来は出来なくとも、エスタの国土から遠くは無い場所
大規模な戦闘があったならば、なんらかの記録が残されていても可笑しくはない
………確かにそうかもしれませんが
「古い記録を探してみることは出来るかもしれませんが、私にはその様な権限はありません」
私の立場はあくまでも一介の研究者
国の情報を勝手に引き出す事の出来る立場には居ない
「情報を求めるのでしたら、あの方に聞かれた方が早いでしょう」
何故私に聞きに来たのかは知りませんが………
続けたフィーニャの言葉に、スコールが嫌そうな顔をした

相変わらず殺風景な部屋
「あの場所での争いの痕跡、な」
ラグナがコーヒーを片手に呟く
「それは俺も調べて見たんだけどな、エスタの記録としては残っていなかった」
「エスタの?」
「前にも言った気がするけどな、昔のエスタの記録ってのはほとんど残されちゃいないんだよ」
言われた言葉に思い出すのこは“魔女”の存在
何故かは解らないが、様々な過去の文献や情報はかつて魔女の支配下にあった時代、魔女の手に依って廃棄されている
聞いた覚えのある言葉
「………それで、“エスタ”にはというのは?」
スコールの問いにラグナが微かな笑みを浮かべる
「ドールの方に記録が残ってるって話だ」
「ドール?」
「あそこも国の規模は縮小していってるが、歴史が長い事は長いからな、あの地で起きた争いについて、ドール側から各国に情報が送られてきた」
ラグナが側に置いていた書類をスコールへと渡す
渡された書類へと目を通す
「………利権争い?」
同じ研究をしていた研究者達が二つに分裂した上で争いが起こった
単純明快な説明
一緒につけられている彼等が研究していたという研究内容は、今となってはたいした物じゃない
「詳しく知りたいのならドールに行って聞くのが良いと思うぜ」
ラグナの言葉にスコールは軽く頷いた

隠された部屋の中でラグナはドールから渡されたデータを入力する
表向きのデータ
そして、エスタにのみ渡された真実のデータ
「データ内容に一致する記述を発見しました」
声が聞こえると同時に現れる詳細なデータ
嘗てあの地に居たという研究者達
断片的な研究内容
そして、滅びの際の記述
内容に目を通しラグナは深く息を吐き出す
「どうなさいますか?」
「あの二人には伝えておいてくれ」
あの遺跡の中で取り残されていた存在
「もうしばらく様子を見る」
「解りました」
何処かで機械が動く音が聞こえた