英雄と情報
(おまけ)


 
残念ながら、あの地は記録にあるかぎり“遺跡”として存在しています
あの場所の事を聞けば
どの場所でも似たような言葉が返ってきた
近隣の村
ガルバディア
そしてドール
どこもあの場所は知り得る限り、記録にある今と同じ姿をした遺跡だったと答える
ドールの言葉を信じるなら、あの場所は遙か昔
ドール帝国が産まれる前から遺跡だったという事になる
いつから遺跡だったのか
いつ遺跡になったのか
あの場所には何があったのか
それを知り得るのはドール以前の文明―――セントラ
セントラ
問い合わせる事が出来るのなら、世界の謎のほとんどは解明されている
滅んだ国に問い合わせる事は出来ない
セントラ時代に残された幾つかの遺跡にも、知りたいと想っている情報は残されては居ない
残るはエスタ
エスタはセントラの後継者
世界に浸透しつつある常識だ
エスタにならセントラの情報も残っているかもしれない
だが………
「無理だな」
もし情報が残っていたとしても、エスタがそう簡単に教えるはずがない
あの場所で行われた調査の結果何らかの情報を掴んでいるかもしれないが、それも聞き出すのは困難だ
ああ見えてオダインも、本当に重要な情報には決して口を開かない
行ってみるか
どれだけの情報が得られるかは解らないが
エスタに行って探ってみるか
今までもたいした情報は得られては居ないが、何らかのヒントは与えられている
まだ、全てを推測出来る程の情報は得らない
だが、何かがある事を察する事は出来ている
考えていても仕方がないな
ここで考えていた所で、手がかりが増える訳じゃない
数刻後、スコールはエスタへと向かった

殺風景な部屋へと通される
いつもと同じ室内
いつもと同じ様に目の前にはラグナが居て、側に在るコーヒーを勧めてくる
「それで、どうしたんだ?」
こちらを伺う様なラグナの声にスコールは勧められたコーヒーへと口を付ける
「遺跡の事だ」
言葉を口にして、スコールはラグナの反応を確認する
「遺跡?」
不思議そうな表情
演技なのか、本心なのか
何を思っているのか解らない
「あそこの調査ならオダインがやったことだからな、俺はあんま知らないんだよな」
最高責任者が知らないなんてことはあり得ない
「あんた、大統領だろ」
「まー、そうだけどな、暴走したオダインなんか相手にしたくないからなぁ」
呆れて口にした言葉にラグナは少し遠い目をする
「調査結果が必要なら、オダインに直接聞いてくれ」
手続きはいくらでもするからさ
続けられるラグナの言葉にスコールはゆっくりと首を横に振る
「………相手にはしたくないな」
まともな話が通じない人間を相手にはしたくない
それに、遺跡の話とは言っても、聞きたいことは別の事だ
スコールの言葉にラグナはただ苦笑する
「まぁ、本人じゃなくても、あの辺の奴等に直接………」
「いや、知りたいのはそっちじゃない」
直接話を聞き出せ
そう言いつのるラグナの言葉を遮りスコールは用件を切り出した

『あそこはずっと遺跡だったんじゃないか?』
記録が残っている訳ではない
ただ“知りうる限り”あの場所は今と同じ状態
いつもよりも情報は多い、とはいえ抽象的な言葉だ
知りうる限りとはどの程度の事だ?
何処までが真実―――いや、隠している事はどの程度だ?
問いかけの言葉は、解っているだろうに上手くはぐらかされる
次第に苛立ち声を荒げ
―――上手く乗せられている
そう気が付いたがいつも通り全ては整えられていた