(おまけ)
話が聞けるとは思ってはいない 聞いたところで、今回もきっと話をはぐらかされ、有意義な情報はつかめないだろう だが……… いつもの部屋 いつもと同じ家具 いつもと同じようにラグナが居て 相変わらず無言でコーヒーを飲んでいる 話を聞くことは出来ない ソレが分かっていてもここに足を運んだ理由は自分自身でも分からない それでも、何か情報をこぼすことを期待している? それとも、今までと変わらないことで――― そっと首を左右に振る 長い沈黙 いつもは饒舌なラグナがこんな時だけは当たり前のように沈黙を押し通す 居心地の悪い時間 このまま沈黙を続けることは難しい 「あの“塔”は………」 ラグナはただ視線を向ける 「………あの塔は、いったい何だ?」 何を言うか どう話をするのか 様々なことを考えていたが結局言葉に出てきたのはこんな言葉 「なんだって聞かれてもなぁ」 いつもの調子、いつもの言葉 あそこはガルバディアの土地で、あの場所はガルバディアが主体となって調査を進めている ラグナの立場なら、そう答える以外無い だが、エスタの人間は内部に食い込んでいる 「何か分かった事はないのか?」 「………それは向こうが発表することだろ」 それは、表向きの話だろう? そう言いたいが、言ったところで話を聞ける訳じゃ無い 「何か発見はあったんだな」 それならそれを教えるよう婉曲に求めるが 「その辺りは聞いてるんじゃないか?」 なんでもないことのようにラグナが告げる 「SeeDは仕事上で知った情報は話す事は禁じられている」 それがただの建前なのはお互い分かっている 「まぁ、こっちも似たような契約を交わしているしな」 落ち着いた様子でラグナがコーヒーを飲み干す 「そもそも、その辺りの情報はオダインに聞いた方が早いと思うぜ」 こっちに情報が回ってくるのは最後だしな などと、笑って告げる 「なら、オダインに話を聞いても構わないな?」 スコールの言葉にラグナが微妙な顔をする 「そりゃ、構わないけどな………」 席を立ったスコールへと 「あのオダインとまともに会話が出来るか?」 心配そうな声が掛けられた スコールが退出していく 分かりやすい感情は、不機嫌そのもので 話が通じないだろうオダインの元へと向かった今は不必要な発言に後悔しているんだろう 「ま、大丈夫だと思うけどな」 まだまだ甘いスコールは、いつもの通りのオダインに上手くはぐらかされ、こちらが望んだ情報だけを持って帰るだろう 「よっと」 掛け声と共に立ち上がる 恐る恐る顔を覗かせた秘書へと後を任せ部屋を出る 「さて、今のうちに逃げるかね」 オダインの元に行ったスコールが余計にいらだつのは分かっているからな 数時間後、官邸の庭から人の叫び声が聞こえてきた
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