告白


 
いつのまにか好きだった
初めて見た時に“美人だ”って思ったのは確かだ
だけど、その時は、それだけ、特別な感情はなかった
いつ頃だったかな?
気づいた時には、好きだった
本気で、愛してた…………
 

久しぶりの休日、ラグナはのんびりと本を読んでいた
「ん?どうした?」
近寄ってきた影に気づき、ラグナは顔を上げる
ラグナの隣に座り真剣な顔をする
「どうした?なんか、困り事か?」
黙って、頷き、慌てたように首が左右に振られる
「………………なんだ?なんかあんのか?」
真剣に聞く姿勢を取ったラグナに詰め寄るようにして、質問が発せられた
 
 

      呼び声が聞こえる
      柔らかく、気遣うような声
      なにも心配いらないような、このまま、ずっとまどろんでいたい様な、それが許されている様なそんな声
      「……眠ってるの?」
      間近で聞こえるレインの声
      ラグナは夢うつつで、覗き込む気配を感じる
      少しだけ………
      眠りの中で、ラグナは願う
      「仕方ないわね……いまはゆっくり休んでちょうだい……」
      そっと、布団がかけ直される
      髪を掻き上げていく手
      気持ちいいなぁ……
      自然にラグナの口元が綻ぶ
      「…………………」
      何かをつぶやく声が聞こえる
      耳に心地よいその声
      ゆっくりと空気が動く
      そっと、側を離れていく気配
      ……また、後で、な………
      ラグナは、幸せな眠りに落ちた
 

なにかあるはずだっていわれてもなぁ……
……………そうだな…………
……あれだな、居心地が良かった
…………悪かったな………
でも、こういうのって、結構重要なんだぞ?
一緒にいて、気持ちいいとか……
こう………楽しいっていうのか?
……あ、あれだ、安らげる
うん、安らげたんだよ
 
 

      「あら、眠っちゃった?」
      ラグナの腕の中のエルオーネをのぞき込む
      「ああ、疲れたんだろ」
      はしゃいでたから……
      熟睡しているエルオーネをみて、ふわりと微笑みを浮かべる
      すべてを見守る様なそんな優しい微笑み
      ………綺麗だなぁ………
      ラグナは、その微笑みに目を奪われる
      「あなたも、疲れたでしょ?」
      向けられた表情は、いつもと変わらない
      エルオーネにだけ向けられる優しい微笑み
      「……いや、そうでもないぜ」
      大丈夫、と応えるラグナの腕から、レインはエルオーネを受け取る
      「だめよ、まだ回復してないんだから、無理はしないで休んで頂戴」
      軽くにらまれ、窘められる
      「重くないか?」
      「あら、大丈夫よ、慣れてるもの」
      朗らかに笑って、エルオーネを抱き上げる
      「あなたも、まだ動ける内にベッドに向かって頂戴」
      そう言うと、エルオーネを運んでいってしまう
      「…………………大丈夫なんだけどなぁ……」
      呟いた言葉は、レインには聞こえない
      ………綺麗だったな………
      あんな風に笑って貰えたら………
      座り込んだまま、ラグナは動けずにいた
 

些細な事?
……そうだな、些細な事だ………
でもそんなものじゃないか?
日常のほんの小さな事が問題なんだ
なんていうんだ?
“知れば知るほど”ってやつか?
……そんなもんだろ?
恋愛なんて、そんなものだろ?
…………俺は、そうだったんだ…………
 
 

      ものすごい音がして、扉が開いた
      な、なんだぁ?
      驚き振り返ったラグナの目に慌てたような、レインの姿が映る
      「どうした!?」
      「ラグナ、エルオーネが来てない!?」
      「エル?………いないのか!」
      今日はまだエルには会っていない
      「いないのね……」
      微かに震えてた声
      「レイ………」
      「ラグナ、あなたマシンガンを持ってたわよね!?」
      ラグナの声を遮るようにして、強く言われた言葉
      ラグナの返事を必要とせずに、部屋の隅に置かれていた、ソレを手に取る
      「レイン!?」
      マシンガンの重みによろめくレインの手から、慌ててラグナはソレを取り上げる
      「ラグナ!」
      「俺が行く」
      レインと目を合わせて、一言きっぱりと言い切った
      その方が安全だろう?
      「そんな事!」
      「いいから、レインはここで待ってろ」
      マシンガンを担いで、扉へと向かう
      こんな時に遠慮なんか、するなよ……
      ……俺だって…………
      「大丈夫だ、必ずつれて帰るから……」
      大切に思ってるんだ………
      ラグナは振り返る事なく、走り出した
 

……決め手になったような出来事??
んな事いわれてもなぁ〜〜
劇的な出来事なんてなかったしなぁ……
いや、そうだけどよ……
ただのけが人だったしさ……
…正直、はじめの頃なんて、それどころじゃなかったぞ?
……いろいろ、俺にだって事情があったんだよ……
だから、日々の積み重ねだって
………信用しろよぉ………
 
 

      「1人で出かけちゃダメよっ!」
      家の中からレインの声が聞こえる
      「ラグナおじちゃん一緒だもんっ、ひとりじゃないもんっ」
      元気の良いエルオーネの声
      いいよな、こういうの……
      勢いよく扉が開く
      「ちょっと、エルオーネ!」
      追いかけてくるレインの姿
      扉を開けたエルオーネは、ラグナに抱きついてくる
      「あら、ラグナ」
      「だから言ったじゃない、ラグナおじちゃんが一緒だって」
      「おお、おじちゃんと、一緒だもんな、心配はいらねーよな?」
      同意を求めるエルオーネの視線にラグナは、大げさな身振りを交え応える
      「もおっ……、今決めたんじゃないでしょうね?」
      エルオーネの抗議の声があがる
      「エル、ラグナから離れないでよ、前みたいな事はしないでよ」
      「うん、約束する、1人で離れたりしない」
      レインは、細々としたことを約束している
      「なあ、レインも一緒にいかねぇか?」
      「あ、それいい考え!」
      「……せっかくのお誘いですけれど、いろいろやることがたまってるのよ」
      「そんなの今度にして、一緒にいこうぜ」
      「そうも行かない事なの」
      残念そうなレインの顔
      「さぁ、行ってらっしゃい、日が暮れない内に帰ってくるのよ」
      背中を押されて、送り出される
      「じゃあ、2人で行くか?」
      「しょうがない、2人でいくか?」
      エルオーネと顔を見合わせて笑う
      「ラグナ!」
      「おおっと、じゃ、いってくるからなっ」
      ラグナは、エルオーネを抱き上げて、走り去る
      「おみやげ持ってくるからねぇ〜」
      怒られる心配の無い場所で背後を振り返れば、レインは戸口に立ったまま、手を振っていた
      ……いいよな、こういうの………
 

え?
……も、もういいだろぉ〜〜?
これ以上は、勘弁しろよ………
な、なんだよ、そこまで言わなくってもいいだろ?
……頼むよ………
な、これ以上は、な?
 

「あたなたち、さっきから、何2人でこそこそと話してるの?」
コーヒを手に微笑みを浮かべ、レインが近づいてくる
「レ、レインッ!」
別にレインには驚かすつもりもなかったのだろうが、ラグナは驚きのあまりとんでもない声を上げる
「……何?やましいことでも話してたの?」
「い、いや、やましい事なんて……」
レインの視線から逃れようと、ラグナはじりじりと後退していく
「だったら、何故逃げるのかしら?」
ラグナの背中を冷や汗が流れ落ちる
「な、なんでもないんだ、な、何でもないよなっ!」
「ちょっと!二人とも!」
レインの声を背に受けながら、ラグナはしっかりと、話相手の手を引き逃げ出した
「……………もう………一体、なんの話をしてたっていうのかしら?」
 

いいか、絶対に教えるんじゃないぞ!
だぁっっ、何があっても絶対にダメ!
な、頼むよ………
いや、だから……………
ホント、頼むよぉ………
 

始まりは心地よい安らぎに満ちた声
そして、優しい微笑み
何者にも負けない意志の強さ
思いがけない弱さ
少しずつ見えた真実
その姿に魅せられた
少しずつ、少しずつ、ゆっくりと好きになった
 
 
 

 
END