夜の情景
 
その夜スコールは、お気に入りの毛布を持って静かに階段を下りていた
階下では、僅かに光が漏れ出ている
扉の前で立ち止まると、小さな話し声と、テレビの音が聞こえた
それは、まだ人がいる証拠
眠れない夜を抜け出して、スコールは扉を開けた

ラグナは、小さな音を立てて扉が開いた事に気づいた
ゆっくりと向けた目にスコールの姿が映る
「ん?どうした?」
スコールへ向け問いかけたラグナの声に、レインもまた、扉を振り返る
声に導かれる様に入ってきたスコールの手には、しっかりと毛布が握られている
眠れないみたいだな
「あら、寝れないの?」
レインの問いかけに、ゆっくりとスコールは頷いた
「まあ、そう言うこともあるよな」
レインが何か言おうとするよりも早くラグナは口を開き、スコールを手招きする
勢いよく頷くと、スコールはラグナの元へと駆け寄った
「眠くなるのもタイミングだからな」
ラグナはレインに、笑顔で同意を求める
「……それはその通りだけど……」
「なら、なんにも問題ないよな」

寄りかかった体を通して、耳の奥に低く声が響く
話し声と、遠くに聞こえるニュースのテレビの音
さっきまでは、あんなに眠れなかったのに……
静かな声と、暖かな体温が、スコールを眠りに誘っていた
まだ、眠りたない
せっかくの時間だから、もう少し起きていたいと思うのに
スコールは、目をこする
「眠くなったんじゃない?」
柔らかな声が問いかける
「まだ眠くない……」
もっと、起きてたい
「眠くなったらちゃんと寝るよな?」
隣から聞こえた声に、スコールは勢いよく頷いた

「……眠ったわね」
レインは、確認するようにラグナに向かい静かに話しかける
ラグナの隣で、スコールが寝息を立てている
「みたいだな」
視線をスコールへと移動させ、しっかりと確認したラグナの言葉
レインは立ち上がり、起こさないよう静かに、スコールの体に毛布をかけ直した
「それで、どうするの?」
まさか、このままにしておくなんて事はないでしょうね?
「ちゃんと部屋までつれてくって」
当然だろ?
というように、言葉が返される
確かにそうね、ラグナが放っておくって事はあり得ないわね
「気をつけて運んでよ?」
せっかく眠ったんだから、目を覚まさないようにね?
「ラグナおじさん、そそっかしいからね」
え?
声に驚き振り返った先には、しっかりとした足取りで歩み寄るエルオーネの姿があった

「なんだ、エルも寝れないのか?」
レインは驚いていたけれど、おじさんの方は当たり前の様に話しかけてくる
「ちゃんと眠ってたけどね」
答えながらエルオーネは、側のソファーへ腰を降ろす
こんな時間だけど、怒ったりしないよね?
眠ってるスコールを見ながら、エルオーネはどきどきした気分で、二人の様子を伺っている
「ココアでいいわね?」
ため息混じりにそう言うと、レインが台所へ歩いていく
今のは、ここに居ても良いっていうことだよね?
「うん、それで良いよ」
すぐ側でスコールが眠っているから、答える声は小声になったけれど、明るくエルオーネは返事をした
「うるさかったか?」
レインがいなくなってから、おじさんがこっそりと聞いてくる
「そうでも無いよ」
やっぱり本当は起きてたのばれてるかな?
そっとおじさんを伺うと、笑みを浮かべて見ている
「あんまり遅くまで起きてちゃダメよ」
ココアを置いて、あきらめた様な口調でレインが言った
「………うん……」
レインも気づいてたんだ、なんで分かったんだろう?
疑問に感じながら、ゆっくりとココアを口に運んだ

「……結局こうなるわけね」
笑いをこらえたレインの声
ソファーで、2人の子供が眠っている
「たまには、いいんじゃねーか?」
眠れない時間に不安になる事も、こっそりと夜遅くまで起きているという事も子供だけが味わえる出来事
「そうね、たまにだったらね」
たまになら、賑やかな夜も悪くないけれど
どちらからともなく顔を見合わせ微笑む
「そろそろ寝るか?」
スコールを起こさないように慎重にラグナが立ち上がる
「そうね……起こさないようにお願いね?」
「わかってるって」
小声で会話が交わされ、ラグナがエルオーネを抱き上げ階上へと登っていく
レインはカップを手に持ち台所へと向かう
ラグナが戻る頃、レインもまた片づけを終えて、室内へと戻ってきた
ラグナがスコールを抱きあげるのを確認し、レインが明かりを落とした
やがて、扉が閉まる音が屋敷内に響く
家の中には、静寂と暗闇がおとずれた
 

 END