微睡み


 
窓から差し込むのは心地よい冬の陽射し
久しぶりの晴天
ラグナは、窓辺で陽射しを浴びながら、心地よいまどろみの中にいた
窓の外で鳥の鳴く声がする
そして、階下の部屋から人の話し声
意識が半ば、夢の中へと向かいながら、ざわめきを聞いている
瞼の裏で、冬の弱い陽射しが、不思議な色彩を象る
暖炉の中で大きく火のはぜる音がする
明確に認識していない意識が、身の回りの音を光を吸収する
陽射しで暖められた雪が屋根から落ちる音
意識にフィルターが掛かったように、どこか遠くの出来事の様な気がする
眠ってもいなく、起きてもいないあいまいな時間
階段を上る足音
……起きないとなんないか?
そう遠くない時間にたどり着くだろう人物を思い
意識が未練がましく抵抗している
気持ち良いんだけどな
足音が隣の部屋の前で止まった
……なんだ……
この心地よさから引き剥がされずにすんだという思いと、起きるタイミングを逃してしまったという思い
現実味のない思考の中で、ラグナの意識が再び沈没していく
眠りの落ちる寸前
近くで聞きなれた声が聞こえた気がした

日が傾き気温が下がりはじめる夕方
傾き、移動した陽射しに、室内の温度が下がっていく
肌寒さを感じ、ラグナは目を覚ました
階段を軽い足音が駆け上がってくる
大きく伸びをし、漸く目を覚ます
すると、背に掛けられていた毛布が床へと滑り落ちた
ラグナが毛布へと手を伸ばすと同時に勢い良く扉が開く
「お父さん、お母さんが呼んでるよ!」
声と同時に小さな身体が飛び込んでくる
「今、行く」
「わざわざ呼びにきてくれたのか?」
問いかけと、お礼の言葉に、スコールは、嬉しそうに返事を返す
拾い上げた毛布を椅子の背に掛ける
「それでね、今日ね………」
ラグナは歩きながらスコールの話を聞く
相槌を打ちながら、今日の出来事を聞くラグナの手によって扉が閉められた
話し声と、二つの足音が遠ざかっていく
少しの時間を置いて、階下から賑やかな声が聞こえた

一つ残された毛布に夕暮れ時の太陽が僅かな光りを投げ掛けている

 
END