小春日和
窓から差し込む日射しのまぶしさに目を開けた
雲ひとつない晴天
わくわくした気分で、窓を開ける
静かに、朝の少し冷たい空気が流れ込んできた
一つ、大きく深呼吸をする
「今日は何が起きるかしら?」
こんな気持ちの良い日は何か楽しい事が起きるはず……
太陽が中天にさしかかる頃、ラグナはゆっくりと階段を降りてきた
久しぶりの休日
最近忙しかったせいか、ぐっすりと眠っていた
まいったな………
階段を降りきった先には人の気配がない
「あー、出かけちまったか……」
久しぶりの休日に、家族で出かける
そんな約束をしていた
気を遣って起こさなかったんだよな……
レインと、2人の子供のやりとりが思い浮かぶ
「約束やぶっちまったな」
楽しみにしていた約束を破った罪悪感と、一抹の寂しさ
ため息を吐き、ラグナは手すりへと凭れ天を仰ぎ見る
「今から追いかけていくってのも……」
今日の予定を思い浮かべる
「ちょっと無理があるか……」
場所に辿り着くのは簡単だが、どこにいるか探すのが難しい
まさか放送で呼び出す訳にもいかないしな
そんな事をしたら、きっと騒ぎが起きる
「仕方ないか」
納得いかない思いを無理矢理飲み込んだ
用意されていた朝食を食べ終える
「暇だな……」
空中に小さく呟く
読もうと思っていた本や、暇が出来たらやろうと思っていた事はあるが、やる気にならない
「参ったな……」
暇をもてあましている、それなのに何もやる気にならない
気持ちの良い日射しが窓から差し込んで来る
窓からは微かな微風
外出したくなる様な陽気
家に居るのは勿体無いよな
ラグナは立ち上がり、庭へと出ていった
「ただいまー」
夕方、大騒ぎしながら、レイン達は帰ってきた
家の中から答える声がしない
「おじさんいないの?」
エルオーネと、スコールは顔を見合わせて、家の中へと走っていく
「まだ寝てるなんて事はさすがに無いわよね?」
起こしても起きる様子もないくらい疲れてるみたいだったから置いていったけれど、さすがに今も寝ているとなると問題だわ
買い物と、おみやげを手に、ゆっくりと歩き出す
スコールの声が庭の方から聞こえてきた
ラグナの声が明るく響く
荷物を置いて、レインは庭へと向かう
「何?どうかしたの?」
「おう、お帰り」
笑顔で出迎えたラグナの背後に朝には無かった物が出現していた
「……それ、どうしたの?」
エルオーネと、スコールが、興味深そうに覗き込んでいる
「いや、天気も良かったし、作ってみたんだけどさ」
作ってみたって……
手作りのテーブルに椅子、箱なんかが置いてある
椅子に腰掛けるエルオーネの姿を見て、そっとテーブルに手を置いてみる
「上手く出来ただろ?」
得意げなラグナの顔
手放しでほめる子供達の声
「こんな才能があるなんて、知らなかったわよ?」
ほんとに、案外器用なのよね
「でも、ちゃんと片づけてよ?」
作品の周りに使った大工道具が散乱していた
できばかりの机と椅子を運び込む
今まで使っていたテーブルは今日だけは脇へとどかしてしまう
真新しい木の匂い
たっぷりと吸収した日射しの温もり
湯気が昇る暖かい料理が並べられる
「それで、今日はどうだったんだ?」
ラグナの言葉に、子供達が夢中で今日の出来事を話す
ほんの少し、一緒に行けなかったことを責める言葉が見え隠れしている
話を聞きながら、ラグナはしきりに悔しがって見せる
「次の休みこそ、ちゃんと起きるからな」
食事が終わる頃、ラグナは小声で、明確ではない約束をした
カーテンを引く
窓の外には満天の星空
「明日も天気は良いみたいね」
明日も気持ちの良い天気なら良いわね
天気が良いと気分も良くなるもの
END
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