炎天下の下、待ち人はまだ来ない 何度目かのため息をつきながら、時計を見る 待ち合わせの時間から、20分 もう一度周囲を見渡して確認する 人々の中に、その姿は見えない じっと遠くまで目を凝らしても、来る気配がない ……場所を間違えた? ふと過ぎる不安 確認した言葉を覚えているから ……間違ってはいない ……それなら、時間を間違った? 慌てて、メモを取り出す 記されている場所も時間も間違えてはいない それなら、遅れているだけ 「何やってるのよ」 不安を押し殺すように、怒ったふりをする ――――まさか、事故にあったんじゃ…… 心の奥に押し殺した不安 ――――何か事件に巻き込まれた? イライラした様に、指が何度も腕を叩く ……きっと、仕事が長引いているだけ 組んだ腕は不安を押しとどめる為 ………大丈夫、きっとすぐに来る 不安を怒りにすり替える 何が起こるか解らない いつ、どんな時に、どんな事が起きても不思議ではない だから、不安になる なぜ、こんな時に限って連絡が取れないの? きっと大丈夫とどんなに思っても、気持ちをすり替えても、時間が経つ程に不安が大きくなっていく 時計の針が待ち合わせから25分が過ぎた事を知らせる 「後5分が限界だわ」 声に出して決意を固める 30分経ったら、一度帰ろう 不安を抱きながら待つのは、来ることを知っているから 不安を感じるのは、来ることが出来ない状態にいないか ただそれだけ 睨みつける様に時計の針を見つめ、ふと顔を上げた 遠くから、慌てて走ってくる人影を見つけ、レインは笑みを零す ほら、やっぱり遅れて来ただけだった 心を過ぎるのは深い安堵 「遅いじゃない、今帰ろうかと思っていたところよ」 心配していた事を気付かれない様に、走ってきたラグナを怒ってみせる 「わりい、ちっと仕事が長引いて……」 きっと、心配していたことを知ったら、心配を掛けた事を気にする 「仕事なら、仕方ないわね」 わざとらしいため息を1つ 「さ、行きましょう」 ――――無事だったなら、それでいいの 「……………」 ラグナが小さな声で呟く レインは聞こえないふりをして、ラグナと腕を組んで歩き出した END
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