ゆめ
寒い冬の夜は
暖炉の前、みんなで寄り添いながら
優しい時を過ごすの
そうして、いつの間にか眠りに落ちる子供達の姿と……
特別な事は何もないほんの些細な光景
昔、想い続けた幸せな光景
目の前で赤く燃えさかる炎が揺れている
炎にさらされた顔が熱い
窓の外から、聞こえてくる声
赤く火照った頬を押さえながら、窓辺へと立つ
冷たい風の中、窓を見上げて手を振る姿
寒さの中で驚く程の薄着
側を走り去っていく、人影に
あきれる様な、納得するような
私に向けて、外へと誘うように手を振る
その行為に気づいた子供達も
炎の温もりで暖まった身体は、冷たい空気の中へ身を置くのをためらう
返事をしない私にしびれを切らしたのか、家の中へと駆け出そうとする姿
窓の外には、暮れかかった太陽
もうすぐ訪れる夜
腕を伸ばし窓を開け放つ
押し寄せてくる冷たい空気
反射的に身体が強ばる
「そろそろ夕飯なんだから、いい加減戻ってきなさい」
ほんの少しだけずるい言葉
ほら、勢いよく駆けだしてくる
その背後で、脱ぎ散らかされた服を拾い上げている
窓の外には夜の暗闇
暖かな部屋と外の世界とを遮る冷えたガラスに、赤く燃える暖炉の炎が燃えている
側で、紙をめくる音が聞こえる
会話の無い静かな時間
昔夢見た光景に酷似していて、全く違うモノ
階上で声が聞こえる
足りないのは子供達の姿
じっと暖炉の前に座っているなんて、きっと無理な話
暖かい暖炉の炎を身に浴びて
寒い冬の夜を過ごす
遠くから聞こえる声や物音
遙か昔に思い描いた光景とはまったく違うモノ
けれど、今のこの状態は思い描いたそれよりももっと幸せな光景
END
|