まどろみ


 
その日は、この冬一番の寒さだった

感じたのは寒気
その日、朝の目覚めは気だるさと共に訪れた
霞がかかったかの様に重い頭
起きあがろうとすると、鈍い痛みが走る
「………風邪でもひいたか?」
重くいうことを聞かない身体をベットの沈め、小さく呟く
喉を、冷たい空気が突き刺して行った

暖かい部屋
額の上に置かれた冷たい布の感触
…………?
まどろみから目覚めたばかりの頭は状況を把握仕切れない
目を開き、周囲を見渡し、歪む視界に慌てて目を閉じる
……今日は休み……だったか?
はっきりしない意識の中で、そんな会話を交わした覚えがある
目を閉じると、ゆっくりと意識が闇の中に吸い込まれて行く
……ま、いいか
考える事を放棄して、誘われるままに、眠りへ身を任せた

「だいぶ、顔色も良くなったわね」
だいぶ楽になった身体を起こし、薬とコップを受け取る
乾いた喉に冷たい水が染み込んでいく
「もう、大丈夫だぜ?」
ベットから身体を下ろそうとすると、慌てて止められる
「ダメよ、もう少し休まないと」
大丈夫だってのに、な
苦笑してベットに身を横たえたが、待ち望んでいたかの様に、眠気が襲ってくる
「もう少し、眠ったら?」
声が優しく語りかける
囁くような声、眠りに誘うような………
声に導かれるままに、深い眠りについた

熱にうなされたまどろみの中で声が聞こえてくる
「近頃忙しかったから、疲れてるのよ」
カラカラと鳴る金属音
「突然寒くなったし?」
軽い足音
「お仕事は、昨日で終わり?」
ゆっくりと、扉が開く音
「だから、気がゆるんだのよ」
声を忍ばせ、足音を殺し近づいてくる人の気配
やがて耳元で水音がし、心地よく冷たい感触が頬に触れた

遠くで聞こえる心配そうな声
暖かな気持ちに包まれながら、まどろみの中を漂っていた
 
 

END