雨音
――眠りへと誘う響き――



 
耳に響くリズミカルな音
次第に強くなる物音が気になって目が覚めた

視線の先、目に映った光景は、予想以上の激しい雨
濡れそぼった街並みが雨に霞んで見える
………雨か………
寝起きのぼーっとした頭にそんな言葉が思い浮かぶ
降り続ける雨のせいか、昨日よりもだいぶ下がった温度
ベッドに座ったまま、見るとも無しに窓の外を見ていた身体が肌寒さを感じる
……………まだ早いよなー?
目覚まし時計へ視線を向け
しっかりと時間を確認することなく、近くにある上掛けを手に取りもう一度寝ころんだ

賑やかな音を立てて、雨が降っている
激しく降り続ける雨の音を聞きながら、いつも通りに朝食の準備をする
鍋の煮え立つ音、包丁が刻む音
雨の音に混じって聞こえるリズミカルな音
軽やかな音がゆっくりと止まる
降り続ける雨の音が勢いづいたように大きくなる
「……よく降るわね」
この様子だと、今日は止みそうもないわね

遠く、水が流れる音が聞こえる
身体に触れる暖かな手
微かに大きくなる水音
「起きなさい!!」
突然耳元で聞こえた大声に、ラグナは飛び起きた
「ようやく起きたわね」
薄暗い室内に、腰に手を当て呆れたように見下ろすレインの姿
「……って??」
状況が掴めずにいる、ラグナへと目覚まし時計が差し出される
時計の針が指し示している時間は、8時50分
「……!?」
状況を認識し、ラグナは慌てて、ベットから離れる
「……っかしいなぁ?」
目覚ましが鳴った覚えもねーし、いつも通り寝てたはずなんだけどな?
レインに手渡される服を身につけ、部屋を飛び出していく
「ちゃんと、顔を洗うのよ!」
部屋の中から聞こえたレインの声に、そのまま出かけようとしたラグナの足が急停止した

降り止まない雨の音
薄暗い空の色
冷えた空気が少し肌寒さを感じさせる
まるで、夜明け前の様な気候
「勘違いするのは無理ないけど………」
滝の様に流れる雨の音
「良く眠れるわね」
よりいっそう雨が激しくなった

―――数時間後
閑散とした執務室内
不意の大雨に、なかなか出勤出来ない人々の姿を見ながら
「……大雨の日は休みにするか……」
ラグナが呟いた
 

END