指輪


 
指の中で輝く約束の印
手の中で誇らしげに輝いている
綺麗だなって始めに思って
それから、そして………

買い物に出かけた先で、突然エルオーネが足を止めた
「エル?」
呼んだ声も気づかないみたいに立ち止まって、一点を見つめている
ゆっくりと移動させた視線の先にあるのは小さな雑貨屋
エルオーネの視線の先に在るのは、良く在るアクセサリー売り場
一生懸命に見つめるエルオーネの姿にレインは笑みを誘われる
………なるほど
きらきらと光を放つ、色とりどりのアクセサリー
ずっと昔、ソレを身に付ける大人達をあこがれて見つめていたのは覚えのある行為
そして、大人達からすればおもちゃに過ぎないソレを手に入れた時の鮮やかな気持ち
もう明確には覚えていない、うきうきした感情
「………エール?」
2度と味わえない“初めて”の感覚が蘇る様な気がして、レインはどこか弾んだ声で、エルオーネを呼ぶ
すぐ側で呼んだ声に、エルオーネが勢いよく振り返る
よっぽど驚いたのか、丸くなった目がレインを見つめる
「………あ………」
せわしない瞬き
「そんなに驚かなくても良いと思うな」
くすくすと笑うレインに、少し朱くなって抗議と言い訳の言葉
「………ソレで、エルオーネはどれが欲しいの?」
彼女の主張を無視して綴った言葉に、エルオーネの表情が輝いた

エルオーネの小さな指にはめられた小さな指輪
嬉しそうに笑って、大切そうに触れて
手をかざし、厭きることなくエルオーネは指輪を見ている
その様子が微笑ましくて、レインは柔らかな笑みを浮かべる
「やっぱ、女の子だよなぁ」
すぐ隣で、同じようにエルオーネの姿を見て、ラグナがしみじみと呟く
厭きもせずに同じ仕草を繰り返すエルオーネの側へとスコールが近づいていき、不思議そうな顔で覗き込んでいる
「綺麗でしょ?」
どこか自慢げなエルオーネの声
少しの時間をおいた後、スコールが無言で頷いた

指にはまった小さな指輪
初めて見たときから憧れていたモノ

宝石箱の片隅にしまわれていたサイズの合わない指輪を見つめてエルオーネは笑みを浮かべる
ガラス玉のはまった、おもちゃの指輪
もう、二度と使うことは無いだろけれど、大切な宝物
遠くから、エルオーネを呼ぶ声が聞こえる
宝石箱を閉じたエルオーネの指で、銀色の輝きが光を反射した
 
 

END