お願い


 
子供がどこからか犬や猫を拾ってくるっていう話は良く聞く話
そしてペットを飼えない状況なのに困るっていう事も良く聞いた話
別にね、動物が嫌いな訳じゃない
ペットを飼うことだって反対するつもりはないんだけれど
レインは、エルオーネを見下ろしてため息をつく
いったいどこでどうやったら、拾って来れるのかしら?
エスタの街中で動物を捨てるっていうのはものすごい勇気のある行為だと思う
―――街のあちこちにある“目”の存在、何かの異常を発見したらすぐに動き出す数々の機関
人では無い生き物の気配は、万が一モンスターだっていう可能性があるからとっても鋭敏になっているっていうのは、先日見たテレビの受け売り
その状況でね、エルがたまたま通りがかるまで誰も気づかなかったっていうのは話としては無理がある
可能性としては、エスタの外へ出ればあり得るかもしれないけれど
それもちょっと現実的じゃない
子供だけでエスタの外へと出て行くのを、ゲートの外へ出るのを止めないはずは無いし
もし、どこかの隙間から出ていったのだとしても、こんなか弱い命が、ね
さて、こうなると、この子犬の出所は………
………誰かから貰ってきたって事になるのよね
たまたま見つけた訳じゃなくて
友達か誰かと話をして、生まれた子犬を貰う事を決めていたということ
腕を組んだまま見つめているとエルオーネが少しそわそわし始める
さぁて、どうしようか
動物を飼う事は、エルにもスコールにも悪い事じゃないと思う
そうね、ラグナだって反対はしないと思うけれど
「本当の事を話したら、考えましょう」
今の私に言える事はこの程度になるわね
何を思い悩んで解りやすい嘘をついたのか知らないけれど、これが最後のチャンスよ
「それで、この子は誰から貰ってきたの?」
レインの言葉に、エルオーネが子犬を抱いたままうつむいた

扉を開けた途端に聞こえる賑やかな声
いつもの様にはしゃいでいる甲高い子供の声と
―――犬?
聞き覚えのある動物の声は、高い声で、小型犬か子犬のもの
とりあえず、理由はわからないが家の中に犬がいるってことは確からしい
首を傾げながらラグナはリビングの扉を開ける
「あーーーっ」
とたんに上がる悲鳴
そして、一直線に駆け寄ってくる物体
ラグナは反射的に、ソレの進路を足で塞ぐ
軽い衝撃と共に、右手が扉を閉じる
………………
見下ろした視線の先に、茶色の子犬が座っている
上げた視線の先に、子供達が期待に満ちた目で見つめてくる
「………んで、飼うのか?」
途端、勢いよく肯定する返事が返ってきた
 
 

END