秋のひととき


 
空が高い
風が冷たい
ガラス越しの日差しは暖かいけれど
移り変わった季節は、寒さを運んでいる

「それで今度の休みにね………」
扉を開けると賑やかな声が聞こえる
明るく嬉しそうな声で話しているのはエルオーネ
返事を返す声が聞こえないのは………
私は大きく扉を開けて部屋の中へと入る
エルオーネの正面の席にあるのは思った通りの姿
いつ来たのは気が付かなかったけれど、彼が訪ねて来たことにエルオーネが気が付いての事ならそれも当然
「こんにちは」
私の挨拶に軽い会釈が返ってくる
「今日はどうしたの?」
そう問いかけながら、私は部屋へと視線を向ける
軽く腕が叩かれる
視線を向けた先でゆっくりと、首が横に振られる
『ラグナはまだ仕事だ』
身振り手振りに合わせて、彼の言葉がきこえる
「あら、そうなの?」
貴方がいるからてっきり戻っているんだと思ったわ
………だって、あの人の方が暇でしょ?
いつもと変わらない言葉を交わしながら、コーヒーを入れる
「あ、私もっ」
いつも通り、エルオーネの言葉に、私はそっと笑いをかみ殺す
少し濃いめのコーヒーが一つ
少し薄目のコーヒーが一つ
それと沢山の砂糖とミルクを二人の前に置いて、私は二人の言葉を耳に挟みながら細々とした仕事をこなす
………そう言っても聞こえるのはエルオーネの声だけだけど………
――――――?
「ねぇ、スコールはどうしたの?」
聞こえても可笑しくないというか、聞こえないと可笑しい声
私の言葉に二人は一瞬顔を見合わせて、ウォードの指が温室の方を示した

「なるほど、確かに気持ちの良い場所だわ」
ガラス張りの室内は心地よい日差しを導いているし、その上特等席にはいつの間に持ち込んだのか、カウチが1つ
スコールに持ち込める筈は無いし、ラグナよね、いつのまに持ち込んだのかしら?
視線の先には気持ちよさそうに眠るスコールの姿
暖かい空気の中、ほんの少し混じる冷えた気配
翳りを帯びた光が見える
「そろそろお昼寝はお仕舞いね」
日が当たらなければすぐに冷え込んで行く
この暖かさが次第に短くなって、もうすぐ冬の気配が近づいてくる
「そろそろ冬支度をするべきかしら?」
今後の予定を立てながら、レインは熟睡中のスコールの体を抱き上げた
 

END