秋模様


 
ぼんやりと見上げた空
柔らかな日差しと鳥の声が聞こえる
サンルームのガラス越しに庭の風景を見て
小さなテーブルの
暖かなポットと茶葉
少しばかりのお菓子を置く
心地よい日差しを浴びながらぼんやりとお茶を飲む
気持ちいいわね
さやさやと風が木々を揺らしている
何もしない
ただぼんやりと過ごすだけの時間
時折吹く強い風に
変わらない筈の温度が冷えた気がする
先日よりも早い日暮れ
蒼く染まっていく空に手にしていたお茶を飲み干す
少し冷えたお茶に自然に眉が寄る
群れになって空を飛ぶ鳥の姿が見える
「平和ね」
暮れようとする日の光を見ながらレインは呟く
家の中からは何の音も聞こえない
珍しく家族がみんな出かけた日
随分のんびりと時間を過ごして来たけれど 
「このまま、静かに一日が終われば楽よね」
そうは言っても、このまま時間が過ぎる事は無いのは良く解っている
もうすぐ帰ってくる筈の家族
賑やかな声が聞こえるにはまだ時間は早いけれど
「さ、仕事をしましょうか」
やるべき事はいっぱいある
「出来ることは今の内に、ね」
手早く茶器をまとめ上げると温度の下がったサンルームを後にする

夕食の支度も終わる頃
扉が音を立てて開く
賑やかな声と足音
家の中が一気に賑やかになって、楽しげな笑みが浮かんだ
 

END