家族の時間
 

 
ぼんやりと本を読んでいた背中に感じた強い衝撃
勢いよくぶつかった身体が、ぐっと背中へ体重をかける
「どうした?」
首を巡らせて、後ろを振り返る
背中に乗ったスコールが楽しげに笑い、小さな両手で背中を押す
「あのね、花火しよう?」
「花火?」
聞き返せば、目の前に花火がつき出される
子供用の手持ち花火
「おかあさんもおねぇちゃんも、待ってるよ?」
「おー、そうか」
………って、やることで話は付いてるんじゃないか?
少し腑に落ちないものを感じながら、ラグナはゆっくりと立ち上がる
「んじゃ、行くか」
「うん」
声と同時に小さな手が手を引いた

薄明かりの差す庭の片隅で賑やかな歓声が上がる
子供達の手から色鮮やかな火花が飛び散る
興奮して言葉にならない声を上げる様子に危ないから、と注意する声が響く
「大丈夫だってば」
言葉の後にまた新たに灯る炎
再び上がる声
こちらを見て得意げに胸を張る姿に自然と笑顔を誘われる
「すごいな」
嬉しそうに頷いて、夢中で花火を見つめている
「はい」
隣から伸びた手が花火を差し出す
思わず受け取れば、すかさず花火の先へとエルオーネが燃える花火を押しあてる
一呼吸後に勢いよく吹き出す火花
「おおっ」
無意識のうちに思わず上げた声に子供達が声を上げて笑う
「綺麗だなっ」
小さな子供達の手前、昔やった様に振り回す訳にはいかない
けれど、手にした花火の火花を見ていると、うきうきした気分になって、はしゃぎたくなる
こりゃ、子供が喜ぶのは当然か?
1つの花火が終わるか終わらないかのうちに、次の花火に火がつけられる
1つずつ手にする様注意するレインの声に一応は従った形で
───半ば従わない形で
辺りを彩る炎

そして、最後の花火が終わる
「もうないの?」
酷く残念そうなスコールの言葉に、
「今日はもうおしまい」
寂しげにエルオーネが言葉を返す
がっかりした2人の様子に、ラグナはレインと視線を交わし、苦笑する
「また今度やろうな」
2人の頭を撫でながら告げた言葉に、ぱっと表情が明るくなる
「いつするの?明日?」
「明日はちっと無理だなぁ」
賑やかな声に返事をしながら、花火が終わった

END