休息
 

 
どこからか歌声が聞こえた

集中していた意識が途切れ
聞こえてきた声に手を止める
聞こうと意識さえすれば賑やかに聞こえる子供の声
聞き覚えのある歌は
同じフレーズを繰り返して、次の歌詞へと進まない
くるくると回る同じフレーズを聞いて居ると
「………なんだった?」
解っていたはずの歌詞が解らなくなる
歌の歌詞が解らない
別に今やっている事に関係がある訳でもなく
どうでも良い事
そのはずなのに、どうしても気になってしまう
「………調べるか」
手にしていたペンを置き、席を移動する
ほんの一時、息をついたはずの時間は、本格的な休憩時間に変わる

ずっと頭の中をぐるぐると巡っている音楽に合わせて階段を降りる
頭の中を巡る音楽に合わせて、こぼれる鼻歌
どこか楽しい気分で降りた場所では
さっきまで繰り返し歌っていたはずの歌声は止んでいて
今はただ、楽しげな声が聞こえる
少し遅かったか
“歌”から興味が離れている事を確認して、少し残念に思う
別に一緒に歌いたいって訳じゃないんだけどな
賑やかに遊ぶ声が聞こえる扉を通り過ぎ
その隣の扉を開く
「あら、どうしたの?」
楽しげな声が問いかける
「ちっと、休憩、な」
手近な椅子へと腰掛ければ、目の前に差し出される1杯のコーヒー
「楽しそうよね」
彼女の視線は隣室へ向いていて
「そうだな」
素直に同意する
暖かいコーヒーをゆっくりと飲む
隣室から聞こえる声に紛れて、小さく聞こえる歌
どうやら同じ様に、歌が頭から離れないらしい彼女の様子に笑みを誘われた

END