平穏な日々
 

 
窓の外に見える景色
日ごとに増える花の姿
最初は気づかなくて
一度気がつけばそこからは意識して
ほころび咲き誇る花の数々を楽しみにする
あのつぼみはそろそろ咲きそう
今日はこちらが咲いた
昨日の予想とは違った風景に出会えたりして
そうやって庭の様子を見るのが最近の楽しみ
「ここを造った人に感謝だわ」
丁寧に造られた庭
綺麗に配置された植物
誰もここが造られた時の事を知らない
───探してみれば知ってる人はいるのかも知れないけれど
この場所も、この都市に幾つもある他の場所と同じで、複雑な運命をたどっている
………名目上は最高権力者の居住地というのは変わらないのか
ガラス越し差し込む日差しに部屋の気温が上がる
時折吹く風が、大きく木々を揺らす
暖かな日差しが心地よくて、次第に眠気に誘われる
静かな環境は眠気に拍車を掛けて………

遠くから聞こえた音で目を覚ます
辺りを見渡して、目に飛び込んだのは沈みゆく夕日
慌てて飛び起きれば、身体の上から毛布が滑り落ちる
床に落ちる寸前、咄嗟に掴み取って、無意識のまま辺りを見渡す。
ぼんやりと庭を見つめていた時のまま、室内には他に人影は無い
けれど
掛けた覚えの無い毛布はここに人が来た証
「眠っちゃったか」
何とも言い難い気持ちをため息に変えて吐き出す
この時間だと夕飯遅くなるかなとか
もしかしたら、もう出来てるかも
なんて、とりとめの無い事を考えて
考えながらも身体は動いている
扉を開けて、閉めて
それからまた開けて───
開けた途端───開ける前から聞こえていた声
「あ、起きたっ」
嬉しそうな声と皿の上に乗せられた幾つかの料理
───間に合わなかったわね
内心ちょっと落ち込んで
「………ご飯作ってくれたの?ありがとう」
それでも笑顔でそう告げれば
同じ様に笑顔が返された

END