冬の夕暮れ
 

 
弱い日差しが陰り始め
今日もまた日が暮れる
次第に周囲の気温も下がり始め
少し悩んで、暖房へと手が伸びる
ゆっくりと暖まる室内に、ゆっくりと身体の強張りがとける
自分一人ならば我慢したかもしれないけれど
暖かい方が嬉しいもの
寒い中帰ってくる彼等はきっと身体も冷えているから
一緒に暖かいものも用意しておこうか

急激に下がった気温
朝と日中、日中と夜の気温差が出てくる時期
「さむいなぁ」
思わず口をついて出る言葉
幾人かが無言で頷く姿が見える
「………暖房入れてもいいんじゃないか?」
部屋の隅に設置されている筈の室温計
遠い位置からでは温度は見えないが、かなり低い温度だってのは多分間違い無いないだろう
幾人かが顔を見合わせる
「行ってきます」
幾つかのやりとりの後、一人が部屋の外へと飛び出していく
「もう少しすれば、暖かくなるだろ」
あと少しの我慢
稼働する暖房の音に自然と空気が緩んだ

頬を撫でる冷たい風に首を竦め、足早に歩く
冷えた身体が冷たい空気に慣れて
感覚が麻痺してくる頃
家の明かりと、窓から感じる暖かな気配
次第に足早に家路を急ぐ
扉を開けば、暖かい空気が身体を包み込んだ

暖かな飲み物を手にほっと息を吐く
身体の中と外から暖められて
身体も気持ちもほぐれていく
「あったかいなぁ」
思わずこぼれた言葉に同じ言葉が重なった

END