父の誕生日
スコールは忙しく動かしていた手を止め
誕生日はどうしようか……
ふと考えた
にぎやかな事は好き
だけど、きっと静かな一日も嫌いじゃない
もしかしたら、むしろ………

誕生日の日
いろいろ考えて、アドバイスを貰って
結局家族だけで過ごす事に決まった
そして迎えた誕生日のいつもと変わらない日常
それでも夜にはささやかなお祝いを……
豪華なごちそうは無いけれど
いつもと変わらない食事しか用意する事は出来ないけれど
日頃の感謝の気持ちを込めて
せめて、暖かで食事とくつろぐ事の出来る時間を
スコールが願ったとおりの穏やかな食事の時間が過ぎる
そろそろ食事も終わるという頃
スコールはさりげなく席を立つ
考えた末に用意したプレゼント
「誕生日おめでとう」
言葉と同時に差し出したのは
スコールにとっては高価なワイン
「おっ」
差し出した瓶を見てラグナが嬉しそうな顔をした

そして……
「ほら、お前も飲め」
早速開封されたワインがたっぷりとグラスに注がれる
「ちょっと、待っ……」
「今日くらいつきあっても良いだろ?」
慌てるスコールの耳にラグナの声が少し寂しそうに聞こえた
「…………」
思わず、見返した視線の先で
ラグナは眼を閉じ、味わうように酒を飲む
子供の頃からときどき見かけた姿
夜中に1人、つらそうな顔をしていた
「祝ってくれるんだろ?」
スコールの視線に気がついたのか、ラグナが笑いかけた
「……そうだね」
今日はお祝いだから
スコールは、そっと手の中のコップに口をつける
今日くらいは、父さんの願いを叶えてあげよう
ぽつり、ぽつりと交わされる会話の中
二人は長い間酒を酌み交わしていた

目の前に幸せそうに眠る姿
「ちょっと飲ませすぎたか?」
それほど反省している様子もないラグナの声が静かな室内に響く
平然と杯を重ね、突然眠りに落ちたスコールの様子にラグナは笑みを浮かべる
レインもこんなんだったよな
ふと思い起こされた記憶
遠く懐かしい光景を辿りながら
ラグナは1人杯を重ねた

 

 

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