今日は特別な日
レイン達は、何日も前から、こっそりと準備を進めていた
「気付かれないようにしないとね」
合い言葉の様にささやきあう
飾り付けは、いつもは使わない部屋の中にしまって置いた
プレゼントも、ちゃんと用意した
ごちそうは………
「スコール、出来るまで、外に連れ出してくれる?」
料理をしたらきっとみつかってしまうから
「わかった、夕方まで帰ってこなければ良いんだよね?」
力強く頷いて、スコールが駆けだして行く
ラグナを呼ぶ声がする
レインは、エルオーネとこっそり顔を見合わせる
「まだダメだよね?」
エルオーネの問いかけにレインは頷く
「そうね、きっと………」
レインの言葉に重なる様にラグナが顔を出す
「ちょっと、スコールと出かけてくるから」
ほら、ね
レインはエルオーネと顔を見合わせる
「夕方までには帰ってくるから」
「行ってらっしゃい、気をつけてね?」
笑い出しそうになりながら、レインは微笑んで送り出す
スコールの呼び声に慌てて飛び出して行ったラグナの返事が遠く聞こえる
「始めようか?」
レインは、腕まくりをして、気合いを入れた

飾り付けられた部屋、テーブルの上に並べられた料理の数々
扉を閉め切って、外からは見えないようにしっかりとカーテンを引く
「灯りは、どうしようか?」
今の時期の日暮れは早い
時間にしてみれば、まだ夕方なのに、外は日が落ち暗くなっている
ここで、灯りを消せば見えなくなるけれど……
「消しておこうよ、それで、入ってきたらクラッカーを鳴らすの」
エルオーネの弾んだ口調
笑顔と共に、両手に持ったクラッカーが差し出される
「それも良い考えなんだけど……」
スコールはどうするの?
「あ……」
エルオーネの目が丸く見開かれる
「もぉ、ダメじゃない」
スコールが先に入ってくると思うのよね
そうでなかったとしても、きっと、スコールもクラッカーを鳴らす方に参加したいはず
「じゃあ、私迎えに行ってこようか?」
エルオーネは、レインの返事を聞く前に、扉を開けている
「それは、良いけど………」
どこにいるか解るの?
そう続けようとした言葉は、誰もいない空間へと響き渡った
「……大丈夫かしら?」
落ち着きのないエルオーネの姿に一抹の不安を感じながら、レインは困ったように首を傾げた

クラッカーの音が鳴り響く
「な、なんだ!?」
慌てふためくラグナの姿
「誕生日おめでとうっ」
子供達の声が唱和する
「へ?」
レインは、消えていた灯りをつけた
ラグナは驚いたように辺りを見回し、レインと目が合う
問いかけるような、不思議がるような視線
「誕生日でしょ?」
あまりにもらしいと言えばラグナらしい反応に、笑いをかみ殺しながら、レインは答える
「俺の?」
子供達が力強く頷く
「そっか……」
満面の笑みが浮かぶ
「ありがとうな」
ラグナの掌が2人の頭の上に置かれる
たちまちあがる歓声と悲鳴
そして、笑い声があがる
楽しいパーティーの幕開け

今日は、家族だけのささやかな誕生祝い

 

 

戻る