スコールは、難しい表情で、招待状を見つめていた
送り先はエスタ
送り先を見て、ほんの僅かにスコールは、不思議な表情を浮かべた
続いて見た差出人はエルオーネだった
おねーちゃん?
エスタ政府からの招待状は受け取った事がある
だが、個人名義の招待状はラグナさえもよこしたことがない
招待状って事は、別に問題が起きた訳じゃないんだよな?
困惑の表情を浮かべ、スコールはその封筒を見つめていた
長い時間が経過し、スコールは、招待状を読む
「3日?」
小さな声で呟き、スコールは難しい顔をして招待状を見つめた

「大統領、休日に申し訳ありませんが………」
その日そろそろお昼になろうとする頃、ラグナの元へ、緊急通信が入った
「どうした?何か起こったか?」
緊急の呼び出しに、ラグナは真剣な表情で画面に向かう
「はい、それが少しばかり問題が………」
緊張に震えた声
彼はラグナに至急こちらに向かうようにと要請を入れる
「解った、今すぐ行く」
簡潔な返事を返し、ラグナは急いで身支度をする
「エル、ちょっと行って来るから」
「はぁーい、いってらっしゃい」
歩き出すラグナの背に、顔だけ覗かせてエルオーネの声が当った

玄関の扉が開いた
「おねーちゃん、いるのか?」
小さなスコールの声
「今ラグナおじさんいないから大丈夫よ」
小さなホールから、エルオーネはスコールを手招きして呼び寄せる
「居ない?休みじゃないのか?」
ホールに入ってきたスコールの手には、荷物がさげれらている
数日分の宿泊用の荷物
「ホントは休みだけど、ちょっと仕事に行ったから」
驚いたようなスコールの目が、じきに疑いの眼差しに変わっていく
「いくらなんでも、そこまではしないよ?」
偽の仕事を回して貰うなんてことは、さすがに出来ない
でも、キロスおじさん辺りが手配してるかもしれないけど………
ふと思いついた人物がまだ一度も現れていない事に思い当たる
「何か手伝う事はあるか?」
「じゃあ、料理運んでくれる?」
スコールの手伝いに指示を出しながら、秘密にしたいからと言った自分の言葉を思い出す
……気のせいよね?
きっと、一緒に仕事中のはずだし……
エルオーネは、こみ上げる疑惑を必死で振り払った

キロスは、書類を片づけながら、時計を見上げた
もうこんな時間か……
時刻は、夜7時を差し示している
確か今日はエルオーネが張り切っていたはずだが……
突然の緊急事態の発生
呼び出しを受けたせいで、キロスはラグナ共々執務室から動けなかった
「これで最後だ」
ラグナの声でキロスは我に返る
「結構時間かかったな……」
しみじみとした口調を聞きながら、できあがった書類を確認する
問題になる様な箇所はない
キロスはラグナにOKを出した
「じゃ、帰るか………キロスも寄ってくだろ?」
室内から安堵のため息がわき上がる
人々は、次々と帰り支度を始めている
「もちろんそうさせて貰おう」
エルオーネの行動を解っていないラグナに、キロスは含みのある笑みを見せる
エルオーネに呼ばれているんだ、行かないわけには行くまい
キロスは、ラグナと連れだって執務室を後にした

「お帰りなさい」
ごちそうが並ぶホールで、エルオーネが笑顔で出迎えた
「うん、ただいま」
ラグナは反射的に返事を返したものの、スコールの姿に驚き呆然として立っている
「おかえり」
ぶっきらぼうな声が掛けられる
「…………ただいま……」
とりあえず、現実にスコールはここにいるらしい
「あのね、おじさん」
状況の説明が欲しいラグナにエルオーネから声が掛けられる
「今日おじさんの誕生日でしょ?だから、スコールも呼んだの」
何?誕生日?
忘れていた日付を思い出す
え、呼んだって…………
もう一度スコールへと視線が釘付けになる
俺の誕生日で、来てくれた?
じっくりと時間をかけて状況が把握される
そっか、それで来てくれたのか
ラグナの顔に笑みが浮かぶ
「こんな風に祝ってもらえるなら、年取るのも悪くないな……」
辺りに、優しい空気が流れる
そして、思い描く事も出来なかった時間を過ごす

 

 

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