欲しいものは無い
行きたいところも無い
さりげなく聞いたプレゼントの内容は
全部否定された

1月2日
今日、明日といつのまにか決められていた休日
上官の談によれば
『ラグナくんへのプレゼント』
という事
「親子水入らずでゆっくり休みたまえ」
と言ったのは、もう一人の上官
今日の休みは自分だけだけれど、明日は父さんも休みにするらしい
国のトップが休む事に問題がある気もするけれど、それが全員からのプレゼントらしいので、多分、問題は無い
問題があるとすれば……
「何を贈ったら良いんだ?」
せっかくの日に何をするかまだ決まっていないと言う事
喜んでくれそうな事が思い付かない
―――何を置いても喜んでくれる事は解っているけれど、それは現実的じゃない
今、喜んで貰える事
スコールは、困ったように辺りへと視線を彷徨わせる
毎日暮らしている日常の空間
部屋の隅に飾られた品々
………あ……
棚の中央に飾られた1枚の写真が眼に入る
色褪せた小さな写真
しばらくそれを見つめた後、スコールは慌てた様に動き始めた

いつも通りの時間
いつも通りの夜を過ごして
「そういや、明日休みらしいぜ」
寝る間際になっての報告
こんな遅い時間に言い出すって言う事は、明日は何処にも出掛けたくないという遠回しなアピール
ここ最近、仕事が忙しかった事は知っている
小さな子供の頃ではないから、無理矢理どこかへ出掛けようなんて事はしない
「聞いてる」
だから返事は素っ気なく
それに、明日は日にちが日にちだから、下手な所に出掛けたりしたら身動きが取れなくなる
後はいつもと変わらない会話
部屋へと引き上げながらスコールはちらりと時計を見上げた

深夜23時59分
部屋の中から微かに漏れる明かり
スコールは扉の手前で立ち止まり、腕時計の針を見つめる
扉の中で人の動く気配がする
「―――」
声を掛ける気配を感じたのとほぼ同時に針が重なった
音を立てて扉が開く
「誕生日おめでとう」
言葉と同時にプレゼントの包みを差し出した

家のあちこちに飾られた家族の写真
スコールが生まれる前の写真と生まれてからの写真の数々
その中で“特別”の1枚
大切に飾られた母の写真をおおきく引き伸ばして、言葉と共に贈ろう
それがせめてものプレゼント

 

 

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