「ところで、知っているだろうか………?」
始まりはそんな言葉
「あら、ぜんぜん知らなかったわ、あの人らしいっていうか、迷惑な日に生まれたのね」
そんな言葉を交わしたのはつい先日の事

毎年変わらないイベント用意の合間に、新しいイベントの用意を進める
それもこっそりと、気がつかれないように
なんて言っても、ラグナ自身は鋭いとは言い難いから、気づきはしないと思うけれど
逆にエルオーネの方はすぐに気が付いてしまって
私はあっさりと、暴露した
当然“内緒”である事を強調して
「きっと驚くよね」
ラグナがいない時を見計らって、エルオーネがこっそりと耳打ちする
「おじさんよろこぶよね?」
エルオーネが、自分で造ったプレゼントを手に、レインへと問いかける
「絶対に喜ぶわよ」
子供のつたない製作だけれど、心の底から喜んでくれるはず
そうしてこっそりと顔を見合わせて笑い合う
「ねぇ、レインは何か用意したの?」
無邪気な問いかけにほんの一瞬言葉に詰まる
「ダメだよ、ちゃんと用意しないと」
ちょっと怒った様にそう言って、エルオーネが走り去っていく
「ダメ、か」
用意、用意はしてある
ただ、ソレを渡すことを躊躇っているだけ
「どうしよう、かな」
迷い考えている間も、手は動く
いつの間にか2つのイベントの準備は終わっていて
私は、ソレを手にして思い悩む
「考えていても仕方ないか」
だって本当はとっくに答えが出ているんだもの
そっと息を吐き出して、レインはソレを包み始めた

そして当日
おめでとうの言葉とプレゼント
ラグナは大げさなくらい驚いて、喜んで



プレゼントはずっと長い間彼と共に生きていった




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