After Ending ...  


「プレゼントを持ってくること」
身内だけのささやかなパーティー
強引に参加する事を承諾させられた通信の最後
言い逃げのように告げられた言葉にとっさの反応ができなかった
「聞こえなかったことにするか?」
目的を考えれば、贈ることはごく普通のこと
だが、わざわざプレゼントを贈るような相手じゃない
………と思う
贈れ、といわれても困る
自然と眉間にしわが寄る
行くのを止めるか
そうすることが、一番面倒が無い
『絶対に来てね』
何度も念押しされた言葉が脳裏をよぎる
「………………」
知らなかったのならともかく、何の日なのか知っていて承諾したのは自分だ
真っ暗なままの画面を見つめ、ため息を吐く
たとえ、無理やりだったとしても約束は約束
最後の言葉は約束には入らないと思うが………
「仕方ない、のか?」
釈然としないまま、スコールは席を立った

誕生日おめでとう
ラグナにかけられるいくつもの言葉
言葉とともに渡される、プレゼント
誕生日の光景としては当たり前の様子
だが、その様子にこっそりとため息を吐く
エルオーネに押し切られる形で参加したパーティー
“身内だけ”
の言葉が事実だとは思えない多数の参加者
『なんか、増えちゃったんだよね』
苦笑しながらのエルオーネの言葉は、嘘じゃないんだろう
それでも、参加者には制限はかかっているようで、ここに居るほとんどの顔は見たことがある
身内だけと言うには、間違っているとも言えない
だが、事実だとも言えない
助かるのは事実だ
人が少なければどうしてもラグナと話をする機会が増える
けれど、今の様に人が多ければ、話す機会は少なくて済む
距離を置いた場所で、むこうの様子をうかがう
すると同じように、ラグナのすぐ傍からこちらを伺う視線
目が合う
声に出さない問いかけの言葉に、視線をはずす
視界の端に怒ったような、困ったような表情が見える
スコールは視線から逃げるように、彼らに背を向ける
じっと見つめる視線を感じる
………別に忘れていたわけじゃない
聞こえなかったことにしたい訳でもない
ただ………
視線を感じながら、部屋の隅に置かれた料理へと手を伸ばす
スコールへと向けられていた視線が外れる
微かに強ばっていた肩から力が抜ける
ただ、どうしていいのか解らないだけだ
ポケットの中で包み紙が音を立てる
伺い見た視線の先で、また一人ラグナに声を掛けた


「おめでとう」
微かな声で告げられたのは、来客も帰り眠りに着く頃
すれ違う手に無理矢理押しつけられる小さな箱
慌てて振り返った先には部屋の中へと消えていく姿
「ありがとうっ」
勢い込んで伝えた言葉に、閉じかけた扉が僅かに止まる
「………いや」
軽い音と共に扉が閉じる

今日が終わるまで後数分の出来事