記憶


 
『子供の頃の記憶ってあんまり覚えてないよ』
そういわれたときは、そんなもんかって思っただけだった
俺だって、そんなに昔のことは覚えてなかったし
覚えてる記憶っていうのは、いやなことばっかりで、だから覚えてるんだと思った
印象が強すぎるからね忘れることができないんだって思ってた
だけど………
次第に明かされる衝撃的な事実って奴を知って
どうしていいか判らなくて
そして、なんとなく気づいた
確に、覚えてる記憶ってのは、いやなことばかりなんだけど
昔のこととか、見て
………見せられて、気づいた
いっつも、いやなこと言って、いじめて、からかって
そういうことばかりしかされてなかったって思ってたけど
それは、それで事実なんだけど
………怒られたって記憶も無い
記憶の中では、泣かされている俺がいて
よく考えてみると、泣きながら結構ひどいこと言ったり、すごいことしたりしてた、気がする
んでも、怒られた覚えが無い
普段の生活では、そりゃ、怒られたことってあるんだと思う
……結構短気だったのに
そういう時に、怒ったことって無いな
今だから、判った
あのときのあんた、困惑してたんだ
どうしていいか判らなかったんだろ
バカだ
バカだって、そう思う
八つ当たりして
むちゃくちゃなこと言って
『大嫌い』だって
そう思っていたけど
俺自身わかってなかったけど
あれってたぶん、甘えてたんだと思う

たぶん『大嫌い』だけど、『好き』だった

 
END