思考


 
悪い夢を見ているんだと思った
信じたくない現実を知って
悪い夢を見ている
そう思いたかった

眠れないまま、迎えた夜明け
赤く染まっていく朝焼けを見るともなく見つめている
こんな現実を知りたくなんか無かった
自分が誰かの見る夢だなんて
そんな馬鹿な事無いって、そう思った
それなのに
どこかで、事実だとその事を受け入れてる自分が居るんだ
普通こんな事言われたって、納得なんて出来ないのにさ
ザナルカンドに向かう途中にあった、膨大な祈り子の姿
“眠らない街ザナルカンド”
彼等が見ている夢
ああ、そうだったのか
って、当たり前の事みたいに受け止めてる
それが、自分が夢の存在だからなのか
それとも、今までの経験のおかげなのか
どっちなのかなんて事まったく判らない
でもやっぱり、こんな事認めないって思っている自分ももちろん居る訳で……
怒ったら良いのか、悲しんだら良いのか
結局どうしていいのか判らないんだ
太陽が広がって、青空が見えてくる
澄んだ冷たい空気が辺りに広がって
今まで生きていた世界では見ることの無かった光景
綺麗だって、思う
スピラに来て、いろんな景色を見ることが出来て
それは良かったって思う
これで、あの言葉が嘘だったら良かったのにな……
答えの出ない感情が頭の中をぐるぐる回ってる
考えても仕方がない事だとしても、やっぱり考えてる

すっかり登り切った太陽が身体を暖める
そう言えば、こうやって現実に存在してる俺ってどういう扱いなんだろう?
現実に存在するみんなと話をして、行動をして、一緒に暮らしてる
祈り子の夢だっていう俺にとって現実で
夢の外の現実にいるみんなにとっても現実
これって、もう夢じゃないって事なのか?
……もしそうだったら良いんだけどな
空を飛ぶ鳥の姿が見える
そして、俺を呼ぶ声
どうなるか、なんてさっぱり判らないけど
もしかしたらって事だって有るんだよな
だから、考えるのは止める
やっぱり考えてしまうかもしれないけど、考えないようにする
どうせその時にならないと、どうなるかなんて判らないんだ
今までだって、どうなるかなんて判らなかったんだから、そんなに思い悩む事じゃない
俺は笑顔を作って、立ち上がる
今はさ、みんなと一緒に頑張ろう
 

けどさ、俺が本当に夢だっていうのなら
夢見てる奴に一つだけ言いたい事があるんだ
もう少し、マシな人生歩ませろよ!
 

 
END