雨音
 ―――止むことのない雨―――
  
 
 ほんの少しばかり降る雨を
 ――涙雨と呼ぶ―
音もなく静かに雨が降り始める
 細い糸の様な微かな雨
 大げさに、悲鳴とも付かない声を上げ
 雨に当たらぬよう避難する仲間達の姿
 1人取り残された雨の中で、空を見上げる
 静寂の中、聞こえないはずの雨の音が耳に付く
 細く降り続ける雨に視界が霞んだ
 雨が降っていたのはほんの僅かの間
 突然降ってきた雨は、同じように突然止む
 「―――――」
 吐息に紛れ漏れ出た声は、誰の耳にも聞こえない
 晴れ上がった空に、好き勝手なことを言う声
 賑やかな声の中に
 かつてここに在った人の声を聞く
 かつて見ていた仕草を想い描き……
 そして、現れる幻影
 現れ出た幻に声を掛けようとして躊躇う
 ソレが幻であることを知っているから
 声を掛けたところで仕方がないと
 そう思っているから
 否定すると同時にすぐさま消えゆく幻影
 そして、再び雨が降る
 細い霧雨
 ひっそりと降る雨は、降っている事にさえ気づかれる事無く……
 今日もまた幻の様に雨が降る
 悲しみの涙が化して降る雨も
 ――涙雨と呼ぶ―
   
END 
  
 |