会話


 
不意に生じた空き時間
少し離れた場所に立つ人影
肩に担いだ大剣
側へ近寄る事を躊躇わせる雰囲気
彼が時折見せる表情
私の視線に気付いている筈なのに
強いまなざしで、遠く見ている
じっと見つめる視界の中
一つの人影が近づいた

親しげに話しかける彼女に
私の視線の先で、彼が言葉を返す
ほんの少し驚いた様な表情、そして笑顔
楽しそうな会話が始まる
声は聞こえない
表情だって、はっきり分かる距離じゃない
なのに、滅多に見る事の無い笑顔がやけにはっきりと見えた

遠くから、聞こえた呼び声
休憩も終わりの時間
好き勝手な場所で休んでいた彼等が集まってくる
楽しそうな2人の様子に声を掛ける事ができなかった
背後を気にしながら集合場所へと向かう
私の張りつめた感覚が、背後からやってくる2人の気配を感じている
ゆっくりと動かしていた足
少しずつ距離が縮まって、声が聞こえた
いつもと変わらない声の調子
明るい彼女と対照的な淡々とした言葉
私が思ってたよりもまだ親しくは無い?
足早に歩く彼等が、私の隣に並ぶ
追い抜いていこうとする彼等の速度が少しだけ遅くなった
私を振り返り、唇が動く
「3人とも早くしろー」
遠くからの叫び声に、彼の言葉がかき消される
「今、行く」
言葉を返し、彼女との会話も打ちきって、一人先に歩いていく
「「あ……」」
2人同時に上げた声
思わず顔を見合わせて、どちらからとも無く苦笑する
「行こう」
そして、二人で彼の後を追いかけた

彼が、大剣を構える
辺りの空気が一瞬にして変わる
張りつめた空気の元、戦闘が始まった
 

 
END