休息


 
戦場の匂い
戦場の気配
巧妙に作られた偽物は
違和感ばかりを引き起こしていた
だからこそ
違和感の中で感じた本物
戦いの気配は、いつになく鋭敏に感じられた
構えた剣の先
どこからか寄ってきた複数のモンスターの姿
共存する可能性の見えない相手の存在は、戦う事に対して躊躇う必要がない
構えた大剣の先、モンスターが怯えた様に動きを止める
「どいてるんだ」
突如あらわれたモンスターの姿に怯え、硬直した人々に声を掛ける
彼等に危険が及ぶなんてことはきっとない
けれど、恐慌した彼等に邪魔をされるという事はあり得る
「ああ、あんたはソルジャーだったな……」
納得したような顔をして、彼等が我先にと後方へ逃げ出していく
『ソルジャーだから』
彼等が残したその一言にため息が漏れる
真実で有り、真実では無い言葉
隙を見つけ近づいていたモンスターを斬り落とす
それを合図に取ったのか
一度に向かってくるモンスターの姿
なぎ払った剣に押され、モンスターが離れていく
そして出来る隙間
確実に敵を屠ろうとした彼のすぐ側に近づいてくる人の気配を感じた
モンスターが放つ殺気に併せて動く身体
その隣、いつもの位置に滑る様に入り込んだ影
無意識の内に、邪魔をしないよう、共に戦える様に身体が動く
それから、ゆっくりと状況を理解する
誰が駆けつけてきたのか
共に戦う戦友の存在
一緒に戦ってきた、戦っているさの存在が心を軽くする
『ソルジャー』と呼ばれる重圧から
何かを期待され、何かを託される重圧から
最後のモンスターが倒れた

夜、何事も無かったかの様に明かりが灯る
辺りを照らす代償の様々な光
光の元に集う人々の姿
モンスターの、外的の恐怖から守られる人々の姿
これが俺たちが守ってきたモノ
これからも守っていくモノ
剣を抱えたまま、平穏な光景に見入っている
つかの間の休息
遠くから、耳に馴染んだ人達の笑い声が聞こえる
そして、夜の闇の中近づいてくる人影
きっと掛けるだろう言葉が脳裏に浮かぶ
「―――――――」
予想と変わる事のない言葉に、自然と笑みがこぼれる
「そうだな、そろそろ戻るよ」
そして、彼もまた光の下へと歩き出した
 

 
END