雨音
―――紛れもない真実―――


 
―――雨の音が聞こえる―――

次第に増えていく雲の数
遠くの空が黒い雲に覆われ暗くなっている
遠く、耳に聞こえる雷鳴
次第に強くなる雨の匂い
崩れて行く天候の中を足早に目的地へ向け歩く
見上げる空を覆う灰色の雲
人気の無い道
獣の姿さえ見えない荒野
ポツポツと
空から細やかな雨が落ちてくる
やがて、強くなる雨足
煙る程に降り続ける雨はいつしか豪雨へと変わる
激しく降り注ぐ雨の向こうに
立ち枯れた巨木の姿が見える
止む事無く、降り続ける雨
雨の中ぼやけて見えるただ1本の巨木
他に何も無い風景
…………こういうのを言い表す言葉が、確かあった……
最近耳にした言葉
最近知った言葉で
確か、そう………
「もの悲しい光景」
ずぶぬれになりながら歩く目に
次第に近づいてくる巨大な木の姿
色褪せ、砕けたその姿には、生命を感じることができない
すべての生き物が死に絶えたかの風景
幾人かの人は、圧倒的なこの光景に、諦めを感じたと聞いたけれど
――――まだ、生きている
雨に濡れた太い幹
もろく崩れ去る不安定な足場を彼女はゆっくりと登っていく
この地へと取り残された2人の“兄”は、まだ生命を終えてはない
願いではなく、確信でもなく“真実”
芽生え始めた感情のまま、彼女は朽ちていく巨木の中心部を目指した

そして
晴れ上がった空の下
探していた真実に出会う

 
END