6  釣りはバランス・・・前編  (2003年掲載分)コラムの目次に戻る ホームページのトップに戻る
多分ここのコラムを見てくださる皆様は、このホームページの大切な常連さんだと思います。
 さして面白くもない自分のコラムを見てくださる訳ですから、自分事、加藤 魚信は心から感謝している次第なのです。
 文章はともかくとして少しでも皆様の心の片隅に伝わる様な話しが出来ればと思っているのですが・・・・ 自分の思っている事の半分でも伝えられたらいいな〜 と、思いつつ今日も眠い目を擦りながら、相も変わらず下手な文章でまとめあげ様とこれまた下手なキーボード捌きで書き綴っております。

 さてさて、タイトルにも持ち出しました「バランス」と言う言葉ですが、実は、この「バランス」ほど釣りに必要かつ大切な言葉は無いと最近になり痛切に感じる様になりました。
釣技とタックル、釣りのジャンルとファッション、対象魚と使用タックル、タックルとタックル?(釣具間の取り合わせなど)それに自分と釣り・・・などなど、思いつくまま書きこんで行ったらキリが無いのかも知れません。

 とにかく全ての面でバランスが悪いと折角の釣りが台無しになります。 やっとで買った高価な釣具も生かしきれないのでは、全くその効果や効用が見えてこないから、本来ならばいとも簡単に得られるはずの感激や感動が体感できない場合も多々あるはずです。
と言う訳で、バランスを考えた無駄の無い釣具選びなどなど、ちょっとは為になる?魚信の独り言的、釣り雑感を色々と・・・・
最近の釣り竿のほとんどはカーボンロッドになりました。もちろん従来からのグラスロッドもあれば、バンブーロッド(竹竿)もあるにはありますが、時代はカーボンロッドが主流になっています。
 どのようなロッドにもそれぞれの長所と短所がありますから、釣りの用途や、釣り人個々の好みで使い分ける事になります。
 
 お客様がロッドを買い求める時、ほとんどのお客様が次の様な注文をつけます。
 「値段が安くて、出来るだけ細く、軽く、張りのあるロッド」 お客様のご希望でありますから、色々な条件が加味されてきますが、現実的には、このような条件を満たすロッドはあり得ないのであります。
 なぜなら、ロッドは細くするためや、軽くするため、張りを出すために、それぞれのコストが上昇する訳ですから、ロッドの価格は必然的に高くなります。
 
 これらの現実を無視して、机上論でロッドを作るのであれば、理論上は安くてもこれらのロッドを作る事は可能です。
 カーボンロッドはカーボンの繊維(糸状)を編みこんで、カーボンのシート(布状)を作り、このシートをロッド状の鉄芯に数回巻き込み、そして炉に入れて焼き込んで作り上げるものですが、カーボンシートを編み込む時に、縦と横に使う繊維(仮に同じ太さと仮定して)の本数を、縦に多く使う程張りのあるロッドが出来ますし、鉄芯に巻きこむ回数を少なくすれば竿自体は軽く出来ます。
 また、この巻き込む鉄芯をより細くすればロッドも細く仕上がる訳です。 以上の様に作り上げれば理論上は「細くて、軽くて、張りのある」ロッドも安く仕上がる事になるのです。

 ところが実際にこのロッドを釣りに使うとなると、全く使えない代物である事が判明するでしょう。
 早い話しが、ロッドとしての強度面に問題が生じてきます。張りはあるのですが肉厚も無く横の繊維が少ないために、ロッドが曲がった時に生じる横の圧力に弱く、簡単に縦割れが生じてしまうのです。
 それでは、これらの欠点を何で補うのかと言えば、同じカーボン繊維でも、より高品質で、軽く丈夫な繊維(原材料)を用い、更に補強材をロッドに加え込む必要がでてきます。
 これらの素材や製造の技術的な事は各メーカーがしのぎを削って競っている訳ですが、当然コストもかかりますから、バランスの良いロッドはやはり高くなります。

 あるお客様が当店で買ったばかりのロッドを返品したいと言ってロッド片手にやってきましたので、返品の理由を聞いてみると、買ったばかりのロッドが既に折れていると言うのです。  
 早速店内でこのロッド(振り出しの6m程度のロッド)を伸ばしてみましたが全く異常がないので、お客様に別段折れている個所はありませんが?と、説明したが、どうしても納得してくれません。
 
 再度お客様の言い分を確認すると、伸ばした竿を手前から見ると途中から(ロッドの中央部分)下に向かって曲がっている様だから、これはロッドの内部が折れている筈だと言って、こちらの説明にはなかなか耳を貸してくれないのです。
 早い話しが、ロッドを伸ばした状態ぐらいで下に垂れ下がるるようなロッドは不良品であると言っているのであります。

 もっともこのお客様は釣りに関しては初心者のようであるが、とにかく真っ直ぐにピンと直線状に伸びているロッドでなければ気が済まないらしい。
 困った私はそこでお客様に提案してみたのです「お客様、このロッドは同じ商品で別のものと交換しますが、私がロッドを伸ばしてみますから少し離れ所の位置からロッドを真横から確認して見てください」と言いました。
 
 お客様は私から言われるがままに離れたところからロッドを眺めているうちに、私にこう言うのです。
「今度のはピンとしていてなかなか良いロッドですね〜」 そうなんです。長いロッドほど自分が伸ばして竿尻から穂先方向を見れば下方に大きく曲がって見えますが、、ロッドから離れて真横から見てみるとその曲がりは嘘のように解消して見えるのであります。(もちろんこれらは目の錯覚的なもので、遠近感覚機能の関係で生じると聞いておりますが、これは人間が持つバランス感覚の弱点かもしれません) 従って、お客様には、自分が持ち竿にすると大きく曲がって見えるものである事を明確にして納得していただきましたが、ロッドは一応新しいものに変えて差し上げました。
このような現象は釣り場でもよくある事で、隣にいる釣り人のロッドはピンと真っ直ぐに伸びて見えるものです。
例え話しにもありますが・・隣の芝生は青い(隣の奥さんは綺麗に見える) ちょっと例えは違ったかもしれません(笑)
 視線と目線の違いでロッドの性格も変化して見えると言う話しです。