8 釣りはバランス・・・ 後編 (2003年掲載分コラムの目次に戻る ホームページのトップに戻る |
ロッドの種類にもよりますが、今業界で一番力を入れて製品化しているロッドはアユのロッドだと思います。 アユロッドの場合、7〜10mと比較的に長いものが主流で作られている関係で、他のロッドよりは、軽さと太さ、それに張り(反発力も含め)の状態が顕著に現れますから、釣り人の目にも、その良し悪しの判別がつき易いのは事実です。 ご存知の通り、これらのアユロッドは2万円程度から50万円もする様な高級品まで存在する訳ですが、これらのロッドには、価格差が示すほどの仕上がりに違いがあるのでしょうか?もちろん2万円と50万円のロッドでは比較する方がおかしい訳ですから、せめて5万円と10万円のロッドを比較した場合の違いと仮定しましょう。 これらのロッドを振ってみた場合、失礼ながら一般の釣り人には価格の違い程の差異は感じられないと思われます。 事実、同じプロ同士の目から見た場合でも、ロッドを振っただけで、これらのロッドの違いを明確に判断できる人は案外少ないのです。 もちろん、振っただけで判別できる様になるまでは、多くのロッドを対象に、ロッドの限界までのテスト経験が必要であり、多くのロッドを意識的に折損するぐらいの過酷なテストを重ねた実績?と経験がものを言います。 自分自身、職業として実釣に使用してきたロッドの本数も500の数を越えておりますが、現実的に手元にはテストを兼ねて使用しているロッドだけでも、ライトなルアーロッドから、ヘビーなジギングのロッド、数種の投げ竿から、船竿なら浅場用から深海まで、そして磯竿ならへチから落とし込み用のロッドから始まり、クロダイを対象とした中小物竿から石鯛、カンダイ用の底物竿まで、また、へラや鯉、アユを対象としたロッド、更にはこれらをベースに作り上げた当地独特の庄内中通しロッドなどなど、その数100本以上は私的に保有しています。 しかしながら、対象魚別に振り分けて考慮しても、本当に調子が良くてバランスが整ったロッドは稀なのです。 もちろんロッドの良し悪しの判断にも使う人の好みがついて回るわけですが、本当の意味で、釣り人が好むロッドとは,ロッド本体のバランスの良さは当然の事ですが、現実的には、使う人とロッドの相性も関係してきます。 この相性もバランスを語るには大切な要素であると、自分は感じているのであります。 釣り人とロッドとのバランスと言っても、何の事か判らないと思いますが、どんな良いロッドを所持していても、使う側が使いこなせない様では、折角のロッドも宝の持ち腐れ状態になってしまいます。 例えば、スキーの板と一口に言っても、スキーの板にも色々な種類と用途の別がある事は皆さんもご存知だと思いますが、大別しますとクロスカントリー、ジャンプ、滑降、回転、フリースタイル、モーグルなど、これらはそれぞれの用途に応じて設計したものであり、個々に違った作りのスキー板なのです。 スキーの種目に応じて、それぞれのスキー板には大きな違いがあります。歩く事が主となるクロスカントリーの板は、極力軽量で操作を楽にするために細身で軽量にできていますが、大空を飛ぶようなジャンプ(実際は高所から落ちていく)競技の板は、風や空気を板全体に大きく受ける様に、かなりの巾と長さを有していることは皆様もご存知かと思います。 これらのスキー板と同じく、ロッドにも用途に応じて色々な種類がある訳で、極論からすれば正に千差万別であり、対象魚と釣法によって異なる作りになっている関係で、色々な釣りに兼用できる(万能的)ロッドはあり得ません。 そこで、こんな話しがあります。自分の紹介で、釣り好きなAさんがテレビの釣り番組に出演が決まりました。 釣りメーカーの釣り番組のため、これらの取材収録中は、このスポンサーであるメーカーが指定した釣具を使用する事になっており、これらの釣具は収録用として番組スタッフが準備しておりました。 取材はクロダイがターゲットでしたが、ロッドもクロダイ用が準備されていた訳です。 ところが、Aさんはスタッフが用意したロッドはもとより、全てのタックルの使用が初めてであった為に、これらのタックル捌きが今一つしっくりしなかったと思われますが、後日に放映されたこの釣り番組の中でのAさんは、クロダイを掛けた場面でもへッピり腰とでも言うべきか?お世辞にも上手な釣り人としては映らなかったのであります。 全てのタックルに自信がなかった様で、クロダイの引きに適切な対応ができなかった関係からか、想像もつかない程の腰抜け状態での釣り場面になってしまったのです。 例えベテランであっても、自分とのバランスが取れないタックルを使うと、まともな釣りが出来ない事もあるのです。 |