9 今の時代そんな仕掛けじゃ釣れないよ?(2003年掲載分コラムの目次に戻る ホームページのトップに戻る
  久しぶりに釣りの技術に関する話しをしましょう。
 最近よく耳にする事なのですが、「今の時代そんな仕掛けじゃ釣れないよ」と、実しやかに釣法を説いて話す釣り人が多くなりました。
 確かに近年は物のあふれる時代、釣具もその例に漏れず、あまりにも多くの用品が溢れていますし、仕掛け一つを取っても多種多様で、売る方が迷うほどですから、使う側もその選別には困る場面も多いでしょう。
 
 当地で釣りの対象魚としての代表魚は何と言ってもクロダイです。
このクロダイほど人気があって、釣り人を惑わせる魚は他に無いと言っても過言じゃないでしょう。
 近年は当地独特の庄内中通し釣法よりも、ウキを用いたウキ釣法が、この庄内でも主流化していることは否めない事実です。
 しかし、庄内中通し釣法を知らずして、すぐにウキ釣法から入った釣り人の多くは、ウキ釣法が絶対的であると信じて疑い無く、庄内中通し釣法を否定する言動も見受けられます。
 そして庄内中通し釣法に対して言う言葉は・・・・「今の時代そんな仕掛けじゃ釣れないよ」なのです。

はたして、今の時代に庄内中通し釣法はそぐわないのでしょうか?・・・いえいえ・・・それは違います・・・と自分は自信を持って答えますが、自分のように即座に反論できる釣り人は時代の流れで確実に少なくなってきております。
実は「今の時代そんな仕掛けじゃ釣れないよ」ではなく、「今の時代、庄内中通し釣法を縦横無尽に駆使できるほどの人が少なくなった事と、真に継承している釣り人も激減してしまった」ために、技術面において釣れる魚も釣る事自体が難しくなってしまったのではないだろうか・・・

ただ、これらの事実はさておいて、これら断片だけの判断で、庄内中通し釣法全てを否定されたのでは、先人達が築き上げてきた素晴らしい釣りの歴史と技術が、闇に葬られるようなものであると自分は残念に感じ、釈然としない思いがこみ上げてきます。   
 
庄内の磯釣り場で釣り人を見渡せば、庄内中通し釣法とウキ釣法を用いる釣り人の比率は、今や3:7でウキ釣法が圧倒的に多くなったと思われますが、自分は両刀使いですから、釣り場には必ず両方のロッドを持って入ります。
正確に言うと、投げやルアーのロッドなども持参しますから、4刀使い?かもしれません(笑)
 もちろん、その日の諸条件にあわせてロッドや仕掛けを現場でチョイスしますから、実際に使うロッドは1本だけの場合もあります。
 釣り場の条件で、庄内中通し釣法が良い場合もあれば、ウキ釣法が有利な事もありますが、どちらも優劣は付け難いのが本音です。

 庄内中通し釣法に限らず、ウキを用いない釣法には、落とし込みや、前打ち釣法、延べ竿による渚釣り(浜釣り)などがある訳ですから、必ずしもウキ釣法だけが最上の釣技であるとは断言できないと自分は思っているのです。
 ところが、あたかもウキ釣法だけが時代の最先端を独走しているかの様に、他の釣法を否定する釣り人が多くなってしまった感があります。
 これらの一部・・・いや、ほぼ半数の釣り人が他の釣り人に言う台詞が「今の時代そんな仕掛けじゃ釣れないよ」なんです。
ウキを用いて沖目に仕掛けを流しても釣れないものが、足下のポイントしか釣る事ができない庄内中通し釣法なんかで釣れる訳がないとか、タックルを繊細にしてハリスなんかは1.5号を使ってもなかなか釣れないのに、3号のハリスなんてとんでもないとか、同じウキを用いた釣り方でも、ウキは○○メーカーの○○ウキじゃないと
ダメだとか、色々様々な理由をつけて「今の時代そんな仕掛けじゃ釣れないよ」と忠告?してくれるのである。

もっとも、悪気があるわけではないのだろうが、これらの釣り人の多くは釣りに関する勉強と経験の不足は否めない。
釣りの上辺だけを齧ったぐらいで、他の釣りを否定するのも考えものだが、否定される方はいい迷惑なのである。
もちろん否定する当人達はその間違いに気づく様子もない・・・・それぞれの釣法の違いをここで話すのやめた方がよさそうですから省略しますが、数ある釣法にも必ず一長一短があります。
 その辺の使い分けが大切だとは思いますが、敢えて不利を承知で自分が愛する釣法を、拘りの中で駆使される釣り人もけして少なくはない様です。
 
これらの釣人は、ほとんどの釣法を知っており、また、経験した上での拘りであるからして、中途半端な口先だけの釣人とは訳が違うから恐れ入ります。
 最もこの手の達人とも言える釣人に若い釣人がほとんど含まれないのは、極あたりまえとも言える訳ですが、それでも、これら拘りの釣りを少しでも吸収しようと頑張っている、新鋭の釣人も少しはいますから、将来を悲観するほどではないようです(笑)
 
ところで、釣具の進歩には目を見張るものがありますから、10年一昔で、釣り糸一つを取っても、同じ号数で強度が倍になった商品も珍しくないのは事実です。
 そんな関係で、例えばクロダイを釣るハリスの場合でも、以前より相当細くても大形のクロダイを制する事ができるようになりましたから、必然的に使う針もどんどん小さくなってきています。

 今の若い方には信じられないでしょうが、自分たちが20年ほど前にクロダイを釣っていた頃には、ハリスは(荒凪の時や、夜釣り)5号で針は海津の20号を用い、がんがんクロダイを釣り上げていた訳ですが、今やこの当時から見れば、仕掛け自体は半分・・・・いや、3分の1程度の大きさであり、太さであります。
正に、今の時代そんな仕掛けじゃ釣れないよ?と言われれそうですが、本当にそうでしょうか・・・

もっとも今の時代、わざわざ必要以上な強度のタックルは無用の長物ではありますから、強いて使う必要はなくなりましたが、魚が利口になったから、そんなごつい仕掛けじゃ釣れないと言う釣り人があまりにも多い気がします。
 昔と違い、魚が学習して利口になったと言う訳ですが、魚はそれほど利口になったとは自分としては思えません。
 最近の釣人がわざわざ釣りを難しくしているような気がしています。
もし、本当に魚が・・・クロダイが学習して釣れなくなっているとしたら、魚の知能に相当なる進歩があるとするなれば、今頃の時代、魚が口を揃えて釣人に語りかけるでしょう・・・・・「今の時代そんな仕掛けじゃ釣れないよ!!」と・・・・・ね。