10 庄内釣法とはどんな釣り?  (2002年掲載分) コラムの目次に戻る  ホームページのトップに戻る
 庄内釣法を良く知らない方に、少しでも判っていただけたらと、あるところで説明したのだが、説明が不完全であったのか、言葉の使い方が悪かったのか?実際は多くの誤解を招いてしまいました。
 
 それでは、庄内釣法とはどんな釣りなのか?・・・・・・・加藤魚信流にもう一度解説してみようと思います。

1,庄内釣法に用いる釣り竿とは、本来であれば竹製の延べ竿でリールも無ければミキ糸とハリスと針だけで釣るのが原則であったが、近年は竹に変わるカーボン製のへら竿や鯉竿、それに鮎竿などの振り出し竿や、並継ぎ竿に小形両軸リールを用い、竿は中通しにしてミチイトを竿内部に通している。
どちらかと言うと、カーボン製の並継ぎ竿を中通しに改造したものが、やや胴調子に仕上がるために、本来の胴調子から元調子である庄内竿に最も類似した感じになる。

2,近年は、竿の長さで通常1,8m〜9mまでを使い分けているが、 これらに用いるものを通常「庄内中通し竿」と言って、庄内釣法に用いる。

3,サラシや払い出し、それに潮の動き合わせて仕掛けを乗せて流し込んだり同調させて釣る釣法が庄内釣法の基本であるが、サラシや払い出し、それに潮流が強い場合などは必要最小限の錘を用いる。
 竿を振って海面に投入した仕掛けは、竿とミチイトの操作でポイントに届くように流し込んだり、落とし込みながらタナの調整も計る。
また、魚の初期の当たりはミチイトや竿先を見ながらにして感じ取るが、竿の手元まで魚信が伝わりやすいのも庄内中通し竿の特徴でもある。
更には、比較的に細身でスローテーパーな竿は、魚の食い込みを促し、魚を掛けてからはその負荷が竿の胴から元に乗ってくるから、比較的に柔らかい竿全体の反発力で魚の引きを吸収するために、魚がバレ難いだけでなく、竿全体の矯めにより魚の引きを堪能しながらコントロールもし易いなど、これらの相乗効果が庄内釣法独特の良さと個性なのです。
 以上が、庄内釣法の基本ですが、竿による仕掛の振込みは、どちらかと言うと、フライフィッシングのロッド操作や、他の釣法にも類似している部分も多い事は否めません。

4,従って、仮に庄内竿の長めの竿に錘を付けて振り込む釣法も一見は庄内釣法の様ではあるが、厳密に言えば一般的に言うところの前打ち釣法になってしまうし、庄内竿の短竿で釣り場の壁面を、しかもスルスル仕掛けを落とし込む釣法であれば、落とし込み釣法になってしまうと言えるから、厳密に言えば庄内竿を利用した別の釣法になってしまう訳です。
 事実、これらの釣法に適合する竿自体の調子はおのずから庄内竿とは異なってきますから、極端に先調子に設計されています。
しかし、これらそれぞれの釣法を明確に分別して解説するのは難しいが、庄内釣法の場合、特にクロダイを釣る場合などは、釣り座と竿を振り込むポイントの選定を含めて、水中に入っている仕掛を竿とミチイトでいかに捌きコントロールするかの技術的な部分も他の釣法とは微妙に違うのです。

5,以上、簡単な説明ですが、純粋で正当なる庄内釣法と庄内釣法を応用した釣法とでは違いがあるという事です。 しかしながら、一般的にはこれらを一色単にして、庄内釣法と言われていますから、一般の釣法との違いが見えにくく誤解されやすい部分だと思われます。  従って、純粋な庄内釣法を駆使できる釣り人は少なく、それが故に純粋な庄内釣法は自分も極められ無いと、いつも話しているところです。

 以上の内容なのですが、他地域の釣人は、庄内釣法が前面に出すぎて、他の釣法を見下げている・・・・とか、磯釣の原点が、あたかも庄内であるような話が面白くない・・・また、庄内釣法は、浮きを使っていないだけの釣法で、むしろ低レベルの釣じゃないか・・・・などなど・・・・やはり、言葉(文章)での説明程度では、真の庄内釣法を理解してもらうのは無理難題なのかもしれません。
 
 最近は庄内における磯釣りも様変わりして、ウキ釣法が花盛りのようである。
 このウキ釣法も、極め様とするならば、ウキの数もかなりのものが必要になりそうだ。
 ところが、このウキの数ほど庄内竿を持っているのが庄内釣法を駆使する庄内の釣り人、20本程度は当たり前、30本はざら、50本でようやく一人前。

 ウキを選ぶ様に、釣り場の状況と対象魚を予めイメージしたり、選定してから竿も選ぶ、昔は竹竿やグラスだったが、今はカーボンのへら竿や鯉竿、それに清流竿やアユ竿を庄内竿に改良するが、各メーカーでも庄内用としての竿を現在でも毎年新発売しています。
 昨年はダイワでニュー汐音、今年〈今)シマノでエアノス庄内。それに30年ほどのロングランを誇るFSK(フィッシングストアカトウ)のオリジナルロッドで、魚愁と魚信シリーズだが、これらはグラスロッド時代から現在のカーボンロッドにいたるまで引き継がれている人気製品なのです。

 とにかく、庄内では磯竿の数倍は庄内竿が販売されているのです。シマノの専門誌フィッシングカフェの創刊誌で紹介されたのも庄内竿と庄内釣法でした。なぜなら、磯釣りの原点が庄内にあるからです。 しかし残念ながら、正当なる庄内釣法を受け継ぐ人は少なくなっています。
 
 本当の庄内釣法が技術的に難しいこともあるが、先に述べた様に極めようとすれば、竿の長さ別、調子別など、かなり多くを必要とする事にもあり、資金面からしても、調達が困難である事もその要因の一つだと思います。
 勿論景気の問題もあるが、何をさておいても、磯釣りだけに没頭する程の本当の釣り馬鹿が少なくなった事と、今の時代の背景が、波長的に磯釣りをダメにしつつあるのかも知れません。
しかし、今もってこの庄内釣法での釣果が、全国的に浸透しているウキ釣法と横並びか、時としては更に上を行く釣果も出ています。
 シンプルかつ古代的な庄内釣法でありながら、これらの釣果実績には驚きますが、やはりそれなりの理由がある訳ですから、その辺の技術と理論を含めた、釣れて当たり前の庄内釣法について、またの機会にお話したいと思います。