13 釣具業界と知的所有権 (2009年掲載分)  コラムの目次に戻る ホームページのトップに戻る

 知的所有権とは誰にとっても身近な存在なのですが、通常は目に見えないばかりか深く考える事も少ないものですから案外軽視されがちです。
 ところが、商売や事業に関係する者にとっては時としてその運営の死活にも大きな影響を及ぼす程のパワーを秘めているのがこの知的所有権なのです。
 
 この知的所有権で工業所有権4法の代表格となる「特許」は誰もが知っている強力な権利になりますが、この他の権利として、実用新案、意匠、商標があります。
 また、工業所有権とは別の権利として保護されるものに著作権がありますが、その権利内容については国内での権利関係の法的運用調整が100%ではないので、判り難い部分がある事は否めませんが、これも立派な権利になります。
 
 これらの工業所有権と著作権の所有者は、排他独占権を得られるものですから、当然これらの所有権者の許諾を得ないで実施や使用はできない事になっております。
 もし、これらの決まりごとを無視して実施や使用をした場合は、故意過失を問わず、刑事罰や民事での賠償責任を問われる事になります。
 現在、刑事罰などが強化されまして、その罰金などの最高額は個人で数百万円、法人なら億単位の金額にも膨れ上がっておりますが、これらの実情を知ってか知らずか、これら権利の存在を無視した多くの違法的な模造品や商標をなどを用いた不正商品が数多く氾濫しています。

 釣具の業界に身をおいている自分事加藤魚信は、多くの釣りを実践したり釣具を販売するばかりではなく、釣具の開発にも心血を注いでいます。
と言うより、釣りをしたり釣具を販売するだけで食っていけるほど近年の業界情勢は甘くはありません。実際、当地域に存在した釣具の販売店はここ10数年で約70%が倒産や廃業している事実がこれらの状況を明確に浮き彫りしている事にもなりますが、客観的にみてもこの衰退状況は異常なのです。

 釣具の開発と言っても、マイナーチェンジ的なものから特許を取得するほどのハイレベルものまで千差万別なのですが、完成してしまえば些細なものでも、その完成に至るまでのプロセスは、他人が思う数倍、いや数十倍の時間と労力や努力が必要なのです。
 このやっとで完成した製品や商品が業界内で評判になったり売れる様になると、すぐさま業界内には違法なコピー商品が出回ります。

最近のマスコミ報道などで「不正競争防止法」と言う、あまり耳慣れない用語が時々出てきますが、実は、この法律そのものは数十年も前からあったものなのです。
 その適用となる事件は過去に数多くあったにも拘らず、運用面が難しかった事もあり、被害者側も告訴や提訴には二の足を踏んでいた場合が多く、被害者はもとより警察と裁判所も同じ様に腰が引けていたように感じます。
 
 この法律の趣旨は、主に、工業所有権などの知的所有権としての権利の登録がなくても、一定の条件に当てはまれば、ライバル会社などによる商品の模造品や、不正な方法での取引妨害、不正な契約などがあった場合、これらの不正行為を差し止めたり、損害賠償金などを請求する事が出来る法律ですから、場合によってはこの法律を犯した者に対する実刑もあります。

 ところが、実際問題として、例え工業所有権の権利を持っていたり、明らかに不正競争防止法が適用されると思われるケースに遭遇したとして、告発や提訴したとしても、警察や裁判所の対応が今だにスムーズとは言えない状況ですし、これらの事件に対して、警察や裁判官が不慣れな場合などは、事件解決までには気が遠くなるほどの時間がかかる場合があります。

 事実、これらの事件の被害者側の立場で自分も裁判や刑事事件につい最近まで関与した経緯がありますので、ここに紹介させていただくものですが、私たちが住む日本と言う国は、相も変わらず、これらの知的所有権に関わる加害者側に対しての措置が甘いと言っても過言ではありません。
 従って、これらの事件がなかなか少なくならない事と、不正をやったもの勝ちの様な矛盾した状況が相変わらず続いているのだと思います。

 事件解決までに時間がかかると言いましたが、特に裁判の場合、現在は東京の裁判所に専門部が出来ているために、東京の裁判所に提訴すれば効率的には良いのですが、地方にいる人間としては、裁判所に何度も足を運ぶ事になるために、その時間と費用などで参ってしまいます。
 最近は地方の裁判所と東京の裁判所において電話を使った裁判の方法もあるにはあるのですが、大半は東京まで出向いての裁判になります。  
 それに、裁判の代理人として、弁護士に依頼しなければとても裁判はできませんので、更に膨大な費用がかかります。