庄内の釣り<磯釣り編>

庄内発"磯釣り"ということで、当面の間魚信が執筆し掲載された雑誌等の内容をメインに、釣りの醍醐味を紹介してゆきたいと思います。また、磯に限らず様々なフィールドでのレポートも随時お待ちしております。

Volume 05 ハケについて考えてみよう(釣りを3倍楽しむ法〜釣り東北連載より)

ハケが生じる要因として多くのプロセスが考えられるが、まずその前に海水の様々な流れについて説明する。
まず最初に海流は暖流と寒流に分けられるが、その発生原因として、降水、蒸発、水温差、風などが考えられている。この海流の反転、巻き込み流や分離した流れが"潮流"に影響を及ぼすと推測される。

磯釣りにかかわる水流"汐流(なぎさりゅう)"

"潮流"は潮の干満差によって生ずる流れだ。基本的に潮回りの変化で海面の昇降運動が生ずるが、主に磯釣りに直接関係している水流は"汐(なぎさ)の汐(しお)"で汐流と呼び、潮流の支交流にあたると筆者は考える。潮流と汐流を総称する場合には"潮汐流"と表現している。
また、潮流が変化時に止まって見て見える状態を"停潮"と言い、弛む状態を"憩流"とか、流向を変えるため転流とも言われている(汐を"なぎさ"とは普通読みませんが、文面を分かりやすくするため使用)。

さて、一般にハケとは釣りに限らず日常的に使う言葉の中にも出てくる。例えば、商店なら「今日は商品のハケが悪い」とか、家庭内では「風呂場の水ハケは良好だ」など。要約すれば、主に"流出"の意味として使用するもので、流入には使わない。従って、釣りにおいてもハケとは流出の場合を指すが、汐流と混同して分かりにくくなるため、筆者は流れの状況に応じて、汐流の一部を水流と表現する場合もあるのでご了承願いたい。大量の降雨による河口周辺の増水流も水流の一種にあたると思う。

ハケに影響を及ぼす潮回り

日本海には主海流として、寒流であるオホーツク海流から分岐したリマン海流が北から南に流れ、暖流である黒潮から分岐した対馬海流が南から北に流れているのはご存じのことと思う。この主海流が、潮汐流は勿論、水温、釣魚に大きく影響している訳で、大局的に見た場合、ハケの要因として無視することはできない。

次に潮回りについては天文学的な話にもなるが、月と地球の引力関係で生じるもので、1ヶ月に2回の周期で運動する水位と水流の変化を指す。若(産まれる)、小(子供)、中(少年)、大(大人)、長(死)の各潮回りとなる。長潮の時は潮流本体が動かず、水位の変化も一番少ないのが基本だが、他の要因で異なることもある。
大潮時は潮流が速く水位の変化も一番大きいのが自然の摂理だが、やはり他の要因が絡むと必ずしもセオリー通りの変化は生じないのである(図1)。

いずれにしても、この潮回りがハケの状態に影響を及ぼすことは確かだ。これらの潮回りと日々生じる干満の汐の動きにより、上り(南方向)と下り(北方向)を含めた様々な潮の動きが発生すると思うが、場所と位置、それに水深によっても異なるから地磯と沖磯、海面と海底でも流れの方向と流速が違う場合も多い。さらに庄内ではそれに入り(寄り)と出の2種がハケに影響を及ぼしている(図2)。

これは庄内特有の地形が要因の一つ考えられるが、風の関係もあるらしく、不明な点も多い。例えば、海から陸に吹く風が長く続くと入り汐となり、逆の場合は出汐になりやすい。地磯の場合、この出汐もハケを生むが、好釣果が期待できるベストポイントは、幅の狭い筋状のハケが生じる所となる(離岸流もこれにあたる)。この場合、水面と底の潮が同一方向に流れるため(流速は違うが)、仕掛けがスムーズに乗りやすくコマセも無駄にならない。釣り人の一言う本バケがこれにあたる(図A)。

ビキナーの方はサラシとハケを混同している場合も多いが、別種のものであることを知っておくと理解が楽だ。

サラシとハケは別物

サラシは波や潮(汐)流が岩などに当たり、白く泡立つように攪拌(かくはん)している水流の状態を通常言う。活発に動く水流により生じる泡が、魚貝類を始めとして多くの水産生物を活性化させる酸素の供給を促すばかりか、時には煙幕の役割を果たすため、特にクロダイの活性と就餌が活発になる。

一方、ハケは波と潮潮流により生じる細い筋状の水流帯(すいりゅうたい)で、サラシとは異質のものだ。釣り座から真直ぐにハライ出し沖に流れるのが地磯では理想だ。

地形と条件別の釣法

1つの例だが、ワンドや入江状の磯で波の高い場合などは、波の押す圧力で海面の水流は寄せてくるが磯際に当たった直後、その波はハケとサラシに変わり、底や別の方向に流れていく(図B)。こんな時は中通し釣法での足下狙いが有利となる。逆のパターンでは、波によるサラシの泡が磯から離れ、沖に出ており、ウキも乗ってハケているように見えながら釣果に恵まれない時は"上バケ底駈込み(かっこみ)"のケースがあり、実際はこのパターンが1番多い(図C)。


このような場合、駈込みが強い程足下に反転流や反作用流が生じるため、中通し釣法で足下を狙えば釣果が出ることもある。しかし、こんな時はコマセも浮遊性のある物を用いて、浅ダナで魚を完全に浮かせた庄内伝統のフカセ釣法やウキ釣法で実績を挙げている釣り人もいる。

もう一つあまりないハケの例だが、上層が寄る水流で底がハケている時。この場含、長竿による中通し釣法とブッ込み釣りが有利で、ウキ釣法は全く不利になる(図D)。

余談になるが、ウキを使用した多くの釣り人を尻目に、中通し釣法の釣り人ばかりがバタバタ釣果を得るのはこのようなパターン時が多い。このテクニックは、庄内の伝統的な中通し釣法が最も適している。

状況が一変するが、一番困るのがどの水深でも全面的に寄せてくる緩い水流の場合。魚の活性も低く、釣りにくいのだ。ウキ釣法の場合、遠投してからゆっくりリールを巻いて誘い釣りする以外に方法がない。これが流速が速いか、強くなれぱ寄せる水流でも足下狙いの中通し釣法、ブッ込み釣法などで釣果を得ることが可能(図E)。



渚釣りでポイント選び

渚釣りにおけるウキ及び中通し釣法でのポイント選びだが、波打ち際を見て探す場合は、砂浜にゴミなどが寄せられている所を目安にするとハケが出ていることが多い。また、離れた所から海面を見ると、波の形状や水色が他とは違っている筋が見えるので分かりやすい時もある。渚でのハケは磯場と異なり広範囲から寄せて集まった水流がハケ出している訳で、魚類の好むプランクトンも一緒にハライ出すので、クロダイも居食い(一定の場所で流出してくるエサを口だけをパクパクさせて就餌)していることが多く、餌付いてもアタリの取りにくい場合がある。

ハケの種類

さて、本題のハケの種類についてだが、文章で表現するよりも図解の方が分かりやすいと思うので、幾つかのパターンを図イ、ロで紹介する。

まずは釣り座とロッドを振り込む位置や仕掛けを流すポイントで、同じ状況でも全く違う結果となることを知っておいてほしい。また、水流のマジックとも言える数多くの動きの中で、ウキや仕掛けを引き込んだり持ち上げたりする上昇流や下降流の他に、止めを生じる潮溜りや縦の壁、それに潮目が演出する横壁には究極のベストポイントが存在するのだ。
先の内容と重複する部分もあるかと思うが、最後に取りまとめとして、参考になればと思い、サラシとハケに関して総合的に解説する(総合図)。

全く波もなく、潮汐流が止まって見えても、ハケはどこかに発生しているものだが(雨天だと海面にその帯状が明確に見える)、釣りに適す程の水流は生じない。同じ釣り座に居ても波と潮汐流の角度と強度で、ハケの発生やその流出の度合いが違うし、岩の形状や底岩の関係でも異なってくる。

沖磯の場含は、波によるハケの発生よりも潮汐流から生じるハケの方が優先するが、この場合細い筋状のハケは出にくい。ハケの強弱と長短、深度や流速と方向(角度も含め)、幅と形状などの個々の説明は誌面がいくらあっても足りるものでなく、それがハケの難しさと奥の深さだと思う。ただ、はっきり言えるのは、ハケの流れに逆行して入ってくるクロダイにとって、それがエサの豊富な楽園に導く花道となることは確かだ。





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