平成4年3月の中旬頃、私の知人が訪ねてきた。用件を聞くと、彼が最近行われた山形県行政会議に出席の際、海洋汚染に絡み、釣り人の使用するマキエを禁止する意見が出され、来春には禁止条例が成立されるようだとの話である。 |
マキエを禁止させたいと思っているのは"漁業者"であることはすでにご存知と思う。漁業者の中でも特に沿岸漁業に従事する人達で、その最大要因は、釣り人と漁業を共用する場面が多いことにある。従って、本誌の読者欄にも載っていたが、「漁業者は生活がかかっており、釣り人は遊びだから...」の理論からすれば、漁業者が嫌がることは控えるのがべターである。しかし、だからと言って釣り人が今ここで安直に譲歩したり、妥協などした場合、とんでもない結果が待っていると言っても過言ではない。
その理由を私なりの意見として、分かりやすく説明すると次のようになる。
マキエとモラルは別
@漁業者側は海が汚れる、漁場が臭くなる、海産物に悪影響が出て困っているなどの理由により、マキエの全てとオキアミ(エサも含む)の使用を禁止させたい意向だが、今の段階では明確なデーターは出ていないのが実情で、岩のりの付着状況が悪い事と悪臭が付着しているという一部地区で、マキエが原因ではないか?と懸念しているだけの事である。漁港のある山形県沿岸地区及び近隣地区からのマキエに対する苦情は、のり付き場以外ではないに等しい。むしろゴミや空缶、残餌の放置による悪影響を指摘する声の方が多い。しかし、これらはマキエとは全く別問題である。しかも釣り人のマナーと言うよりは観光客も含めた、人間個々のモラルとレベルの問題となる。常日頃マナー向上を目指す私達(今、この欄を読んでくださっている諸氏も含め)には迷惑だけであり、無縁の行為である。
A行政側の指導により、関係市町村では広報紙などで、「釣りを楽しむみなさんへ」と題して、「釣り人が使うエサによって、磯場が汚染されているので、マナーを守ってください」とか、「マキエは使い過ぎない事」それに「空き缶、ゴミ、ビニール袋、エサの残りは持ち帰りましょう」などと釣り人側に訴えている。一見するとごもっともな意見だが、指摘されるような行為で釣りをしている人の殆どは、右も左も分からないビギナーや旅の恥はかき捨ての観光客それに、ライフジャッケットやコマセバケツ(釣りの帰りにはゴミバケツになる)を待たない俄釣師的(にわかつりし)な人達である。従ってこれらの行政指導による文面で前者達に効果が期待できるものではなく、むしろ良識ある多くの釣り人や、釣り全体のイメージを悪くしているリスクを広報は持っていると私は思うのだが…。文面の難しさと、人の個々の考え方で受け取り方が異なる一言がズッシリ重く、時には両刃の剣になる恐ろしさ感じる。
釣り人の立場
B視点を変えて、一部の悪さをあえて言うならば、海洋汚染に直結する漁業者の不法的行為にも目に余るものが多いが、その事実をここで紹介するのは控えたい。ただ声を大にして言うならば、殆どの漁業者は漁業権を楯にして、釣り人には厳しく自分達には甘い部分と、漁業権を拡大解釈し釣り人が認められている行為すら禁じようとする事があり、時にはトラブルも生じている。「釣り人も悪いが漁業者も悪いからお互い様」などと茶を濁すような事ではなく、悪い事は指摘改善し正当な権利は堂々と主張すべきだ。そのためには釣り人も釣技やタックルに関してばかりでなく、この種の知識を要す時代に来ている。
C漁業者は海の幸で生活しているのであるから海を守るのは当然であるが、沿岸線添いなどの特に漁港近辺の漁業者は公共用地や通路、それに釣り人が利用する釣り場まであたかも私有地の如く振舞う事があるため、釣り人側は困惑してしまう訳だ。釣り人は遊びで漁業者は専業だからと言って遠慮すべきではないと思う。少なくとも私の釣りは(仕事上の釣りは除く)健康と心のリフレッシュを図るものであり、自然を楽しみながら魚信を待つのが好きだ。さらに本命とする魚が釣れた時は喜びに満され、明日への活力となり、仕事の円滑化につながる、といった具合だ(私にとっては切り離す事の出来ない重要な役割を持つ釣りであるから、一方的な漁業者や行政の言うがまま、なすがままに流されたくないのである。磯釣りファンの多くは魚が釣れてこそ楽しく、個々の目的も満される訳だから、海に害を与えないと確信できるマキエの禁止にはこれからも反対の意見を高めていく必要がある。
D「禁止になろうがなるまいが、俺は勝手にマキエは続ける」的な考えだけはしてほしくない。長い目で見た場合必ずや段階的に禁止条例が制定されるに従い、取り締りも厳しくなると思われる。
例えばまず、のり付き場(人工)でのマキエ禁止、そして全面禁止とオキアミの使用禁止、さらには堤防、漁港内の釣りは全面禁止、磯場の部分的禁止へとエスカレートするのは目に見えている。禁止条例が一つでも成立してからでは運動はすでに遅いのである。釣り人に対する偏見を正し、釣り人としての立場を理解してもらうためにも釣り人はもっともっと主張する機会と、これらの場面を増やすべさだ。そのためには本誌はもとより、新聞などのマスコミに投稿や寄稿するのも一つの方法であり、例え個々のパワーは小さくとも釣り人の意見主張を伝え聞いてもらえる事になれば、必然的に釣り人の意識向上が図られる。
それと同時に、漁業者と行政に対しても釣り人の立場を再認識させるチャンスにもなる。またこれらを足場に釣り人全体がパワーアップして、漁業者、遊漁者全体、行政がそれぞれ肩を揃べてのレベルでの話し合いや、種々の事業や企画などにも参入参席が可能となれば、釣り人を単に「遊びで海を汚す迷惑者」との見方や考え方を是正する事もマキエの効果と必要性、それに無害である事と、海水生物の活性化促進度なども含め理解を広める事もできれば多の誤解も解けるし、不要のトラブルも未然に防せげる訳だ。
釣り人全員が守るべき
E理想はともかくして、今現在伝統釣法である山形県のマキエを使用した海釣りを末長く存続させるには、釣り人の最低限のマナーとしてゴミや空缶、それに残餌などの放置はしない、させないが絶対の条件かと思う。マキエの禁止とは直接的に関係のないマナーの問題であるが、釣り人の例え底辺の行為にしろ釣り人全体が悪評価となり、結局マキエ禁止にまで波及するのが現況の動行である…。
従って私達「山形県の海釣りを守る会」では、向上運動としてゴミ回収及びマナー向上のために、ゴミの回収作戦とポスターやステッカーなどの作成配有などを今後もボランティアでさらに続けてゆくので、皆様のご理解とご協力をお願いすると共に、守る会にご支援をいただきましたスポンサーの各位に厚くご御礼申しあげたい。 |
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山形県の海釣りを守る会
活動状況 |
平成8年12月10日 |
H.4
3.
山形県の海釣りを守る会を結成
3.15
荘内日報・紙上に、オキアミ、マキエ禁止の記事が出る。
漁場利用調整委員来る
5.26
署名運動及び運動諸経費の寄付を、協力方、関係業者に依頼郵送
約60件、釣雑誌に広告掲載。
6.16
山形新聞に公開質問提示掲載
7.14
海区漁場利用調整委員より、同新聞に回答(すぐに、禁止はしないとの事なので署名運動を保留)
7.29
役員総会17名(市内)釣雑誌掲載
9.11
水産事務所にて、アンケート実施
9.20
山形新聞に同アンケートの件の記事掲載を依頼(掲載)(12月にアンケート調査完了)
11.10
釣雑誌にマキエ禁止事情No.1寄稿掲載(業界の認識が甘い、禁止に反対する理由)
H.5
2.17
漁場利用県議会マキエ特別会議(3名当会より出席)
全体的には、委員等17名、他6名が出席
2.24
役員総会17名(市内)釣雑誌掲載
5.10
釣雑誌にマキエ禁止事情No.2寄稿掲載(アンケートの結果、議会の内容)
6.15
マナー向上ポスター作成等の作成費、寄金依頼と協力者への御礼、経過報告、業者郵送
7.10
釣雑誌にマキエ禁止事情No.3寄稿掲載(釣人のモラルと立場、守るべき事)
8.30
釣エサ店との合同会議(市内)代表者出席
9.15
釣人のマナー向上ポスター作成、関係業者に掲示依頼
H.6
6.10
ポスター配布(釣具、エサ店、他)
H.7
2.17
県・海面利用協議会新設、代表委員に守る会より、加藤政敏が県知事より委嘱される。
3.9〜10
県・海面利用協議会に出席(当面の諸問題に関して)
6.15
ポスター配布(釣具、エサ店、他)
H.8
3.18〜19
県・海面利用協議会に出席(各方面の組織化に関して)
7.6
YBCテレビ取材に協力、代表者出演(テーマ・マキエ、ゴミ)
7.18
荘内日報・釣情報担当者に、マキエの砂投下の件を忠告(FAX)(砂投下を薦める記事を、再三載せた為)
12.10
役員総会開催(市内) |
寄付金協力者(順不同)
ディバイス佐々木商店(鶴岡市)
(株)タネムラ(新潟)
丸初エサ店(鶴岡市)
遠藤エサ店(鶴岡市)
(株)栗山商店(三条)
渡船・勝丸(鶴岡市)
亀茶屋(鶴岡市)
(株)マルキュー
(有)加藤えびや(鶴岡市)
福原釣具店(鶴岡市)
石田釣りエサ店(鶴岡市)
フィッシングストア カトウ
(有)黒石釣具店(酒田)
(株)サンライン
(株)リョービ
小野釣りエサ店(鶴岡市) |
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