タンポポ  
別名 薬菜(くすな)

アスファルトの裂け目でも石の間でもたくましく生きているタンポポ。

 タンポポは春を告げる花として親しまれ、又「踏まれても踏まれてもくじけずに花をつけるタンポポのように強くなろう」という主旨で学校の文集などによく命名されていました。
 キク科のこのタンポポは日本には約22種が野生し、セイヨウタンポポ、アカミタンポポなどが帰化しています。タンポポの花は日が照ると開き、日が沈むと閉じるので西洋では”牧童の時計”の愛称があるそうです。けれどもアメリカでは最悪な花とされているようなのです。その呼び名も「ライオンの牙」、葉っぱの形がライオンの牙に似ているからでしょうが、愛すべき名前ではないようです。その訳は、芝生の天敵だからいうのです。日本では春告げの花、くじけない花としてタンポポは多くの人に好かれていますが、所が違うとその受け止め方もいろいろです。その黄色の花びらのようにみえる一つ一つが小さな花なんだそうです。専門的には、花の集まりである花序(かじょ)と呼ぶ。風に乗って飛ぶ綿毛の一つ一つに種が付いていることを考えれば、それぞれが花だったということがわかります。

セイヨウタンポポ
エゾタンポポ
 日本のタンポポは帰化植物セイヨウタンポポ、アカミタンポポが全国各地の都市を中心に、その分布地域を広げ、日本在来のカントウタンポポなどが次第に駆逐されその姿を消しているといわれます。
 右の写真を見比べるとわかりやすいのですが、花の付け根の部分(総苞そうほう)が、くるりと反り返っているのがセイヨウタンポポで反り返らずに重なり合うのはエゾタンポポです。昔から日本にあったタンポポはみな、付け根の部分が反り返らないタイプです。帰化植物セイヨウタンポポは、明治の初め、牛の乳の出が良くなるからと、北海道の牧場にわざわざ西洋のタンポポを導入したといいます。それが増えに増えて、いまでは街の中はもちろん、日本中いたるところに広がっています。在来タンポポは肩身を狭くして?、今ではなかなかお目にかかれません。

 この在来タンポポとセイヨウタンポポを調べてみると、外見上の明瞭な違いは花の付け根の部分(総苞)の形だけです。 しかし、西洋種は春だけでなく、夏から冬も開花結実し多数の種をつける。また、その種は在来種より軽く遠くまで飛ぶ。更に種の発芽温度域も幅広く成熟も早い。そして、一年を通じて葉を広げ光合成を続けるという特徴を持っているのです。さらに!西洋種は単為生殖という、すごいワザを合わせ持っているのです。文字どうり単独でコトを為し、受精が無くてもタネを持つ。したがって出来た種子は遺伝的にも完全に親と同一、いうなればクローンです。単為生殖の最大の利点は、花粉の受け渡しがいらないから花粉を運ぶ昆虫も不要という都会砂漠での繁殖と生活にはうってつけのすごワザをもっています。
 一方在来タンポポは一部例外を除き、虫が花粉を運んで受粉しないと結実できません。それゆえ、虫も少ない都会では存続は難しい。そんな在来タンポポも、夏に植物におおわれて日陰になる環境では、西洋種より強い面もあるのです。在来種は夏に葉を自然に枯らす(夏眠)ので、無駄なエネルギーを抑えられるから、春先に十分な光が得られればあとは日陰でも大丈夫なのです。ちなみに当寺境内のタンポポはカントウタンポポですが、真室川の町中や真室川中学校の土手、近所の道端もほとんどが西洋タンポポです。

 ところで、人間が作物栽培をするようになってから、作物の生育をさまたげる植物は雑草として邪魔もの扱いされるようになります。日本には約600種の雑草があるそうですが、地球環境の視点から見れば益があることを忘れてはなりませんし雑草にもちゃんと名前があるのです。雑草が生えている場所では土がしっかりしているとか、根を深く張ることで雨や風などから土が浸食されることを防いでいます。
 宇都宮大学教授で、雑草の研究者として知られる近内誠登さんは、中国の黄河上流にある黄土高原の砂漠化を防ぐため、1980年代半ばから、研究グループで約600種類の雑草を植え続けてきました。近内さん達は、砂漠化を防ぐために、雑草をわざわざ植えていますが、それは、何万年もの間、さまざまな環境の変化に耐えてきた強さと、元来土を守る役割を担ってきたところに着眼したものでしょう。
 禅の言葉に「無用の用」という言葉がありますが、大自然に無意味な物はない。地球上のどんな存在でも、それぞれが与えられた「いのち」ということからすれば「雑草」という草はないことになるでしょう。アメリカの哲学者、エマソンは「雑草とは、その美点がまだ発見されていない植物である」としています。

 タンポポは別名薬菜(くすな)ともいい食べられます。タンポポには健康維持、増進に欠くことのできない栄養素が含まれています。それは、小松菜よりもビタミンA・タンパク質・カルシュウムのいずれも多く、リグニン・イタリンなどの食物繊維も豊富といわれます。漢方薬の生薬名は蒲公英根(ほこうえいこん)ともいい、肝臓を強くし、コレステロールを下げ、血圧を安定させる、便秘解消などの薬効が示されます。さらにすごいことには、発ガン物質や毒成分が無いどころか、平成10年9月の日本癌学会総会記事(会場横浜)によるとタンポポエキス(白い乳液のタラキサステロール)をマウスに与えることによって乳ガンの発病が遅れたという報告がありました。
 雪国のタンポポは特に薬効成分が多いのではないでしょうか。食材としてなら花の咲く前のやわらかい葉が立っているのがいいですね。サラダや天ぷら、ベーコンと合わせてのバター炒めなども美味しい。タンポポの根はキンピラにしてもおいしいものです。