権力者


 
雑音混じりの音が聞こえる
言葉少なく交わされる会話
相談という名の確認
目的地の判明
そして…………
「……行ってみるかね?」
既に立ち上がり出かける準備を整えたキロスの言葉に従い
彼らの姿を追い、TV局へと足を向けた

警戒しながら門兵の一人がガーデン内へと消えて数分
思ったよりもあっさりと入れたバラムガーデン内
彼等の視線を背後に受けながらゆっくりと歩みを進める
……嫌な雰囲気だな
……ああ
こちらを見つめる教師達の姿
まるで、圧力を掛けるかの様に気味の悪い格好をした、人間の姿
―――学園長室へ
昔より規模の大きくなった建物を案内表示を頼りに彼等は足を進めた

ざわめきが大きくなる
街の中に緊迫した空気が漂う
次々と入ってくるガルバディア兵士の姿
そして………
「あれがガルバディア大統領だ」
過剰な程の護衛に囲まれた車の姿
……あれが?
むろん、車の中にある本人の姿は見えないが、嫌な気分に襲われる
「スコールくんには信じ難いかもしれないが、あれが一般的な権力者の姿でもあるな」
自分のみを安全な場所に置き、それを当然の事と受け止める姿
車が足下を通りすぎていく
眉を潜めたティンバーの人々のささやきが聞こえる
やがて、兵士達に封鎖された道の向こう
長い間使われた事の無いTV局の中へと車は吸い込まれていった

正面に見えるのは、TV局の壁面に備えつけられた巨大なディスプレイ
「何をするものか、楽しみだな」
キロスのつぶやきが聞こえる
「裏路地からTV局に向かっている」
雑音に混じった声が聞こえる
苛立った様な声
なだめる様な声
そして、遠い記憶を刺激する名前
………………
「どうした?」
心配そうに覗き込んだキロスの顔
「……………うん……」
聞こえてくる声に気を取られ、あいまいな返事を返す
知っている名前、知っている―――?
バラムガーデンのSeeD
忘れる事の出来ない少女の姿と共に、ゆっくりと蘇る記憶
彼等は―――
不意に盛大な雑音が耳に飛び込んできた
「始まったようだ」
視線の先、巨大な画面が揺らぎ、男の姿を映しだした
 

 To be continued
 
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