ガーデン


 
TV画像が途切れる
息を詰めて画面に見入っていたシドの口から、詰めていた息が零れ落ちた
「これは……大変な事になりました」
吐息の様な言葉が漏れる
敵対勢力として明確に名乗りを上げた事になるのだから、確かに大変な事かもしれない
……ただし、それが本当であるならば、だ
「実際にガーデンは関与していないのでしょう?」
俺たちの存在を忘れたかの様なシドの様子に、不意打ちでかまをかける
「………ええ、そうなんですけどねぇ……」
煮え切らない言葉の前にほんの一瞬かいま見えた反応
完全に無関係じゃ無いな
「折角、来て貰った所申し訳ありませんが………」
さりげなく視線を交わすと同時に、シドが退出を促した

放映はまだ生徒達には届いていないのか、シドとの会見に向かう前と同じ光景が目の前に広がっている
「……どうする?」
「……見学でもするか?」
絶妙のタイミングで返される言葉
そうだな、どう動くか見るってのもいい手かもな
生徒の反応、学園の反応
重大な事件だというならば何らかの反応がある
そして、反応が出るなら
「後輩と話をするってのも良いな」
情報を漏らす人間が必ず出る
「お前は、話し易そうな奴でも探してろ」
呆れた態度で言い捨てると、あいつは学園内をふらりと歩き始めた

闇雲に話しかける訳にはいかない
警戒が薄く
有る程度の情報を持った人間
教員でも捕まえられるのならばそれが一番だろう
彼奴等は危険だな
顔を隠し、同じ服を身に纏った大人の姿
俺たちがいた頃には存在しなかった教員の姿からは、嫌な感じを受ける
脇を通過する際に注がれる視線
まさに悪意に満ちた視線って奴だな
こいつらの目が届く範囲で、話をする事は不可能って事か
「………………」
背後から小さく掛けられた声に足が止まる
「……なんです?」
名前を呼ばれた以上無視する訳にもいかないな
「元SeeDファウロ、その施設への入室は許可していない」
「それは、失礼致しました」
神妙な表情で答えながら
“元”、ね………
含みのある言葉に彼は内心微笑を浮かべた

学園内に響きわたった放送が、シドの声で学園長室へ二人の人物を呼びだしたのは先ほどの事
……どんな奴が来るのか……
ファウロは、何れ彼等に接触を図る為、学園長室へと続くただ一つの通路を観察していた
「来たか?」
少し遅れて現れたあいつの声
「いや、だが………」
急ぎ足で、通路を歩く二人組の姿
青い服を着た大男と少女が言い争いながら近づいてくる
『学園長』という単語を口にしているようだ
「彼等みたいだな」
咽の奧で二人呟いた言葉が重なった
 
 
 
 

 To be continued
 
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