方略


 
理に適った答えが返ってくる
だからと言って、それを信用したわけじゃねぇ
可笑しい事はまだ山ほどある
サイファーは、バックミラーに映る顔をにらみつけたまま動かずにいた
魔女アデルだって?
話の中でしか聞いた事の無い魔女の存在
確かに、魔女の話をしようって奴は居なかった
その話になると、大人達が上手に話を逸らした事を覚えている
「それで?軍用車をかっぱらうのか?」
ガルバディアのやり方が気にくわないって奴が、ガルバディアの持ち物を自由に出来る、だと
仲間と信用させるには良いかも知れないが、そんな都合の良い事が出来るかよ
警戒の厳重さは、身をもって実感している
脱出するのはそれほど難しく無かったが、彼奴等の持ち物を持ち出すっていうのなら話は別だ
『元ガルバディア兵』と言ったが、それも本当かどうか判ったものじゃねぇ
現在もガルバディアの人間か、それとも…………
サイファーは、含みのある笑顔を浮かべる
「どういった関係だ?」
そっちの餓鬼は無関係だとしても、ただの旅行者じゃないだろう?

SeeDの観察眼が優れているのか
それとも演技が下手なのか……
急ぐでもなく進む車の窓から、景色を目にしながら、スコールの脳裏にそんな言葉が浮かんだ
隣では相変わらず、いつも通りの態度で、キロスがハンドルを握っている
「何、これを貸してくれた相手もまた、『魔女』という言葉に良い感情を抱いて居ないという事だ」
昔の戦友だったということも有るがね
語られるキロスの言葉に嘘偽りは無い
確かに、あの相手はキロス達の戦友で、魔女という言葉に不快感を示していて……
何より、話が判りすぎる程よく判った
けれど、いくら事実だからって、そう簡単に信じられない
その場面を実際に見ていたスコールでさえ、信じがたい出来事だというのに、彼等SeeDがそれを信じるのは無理だと思う
きっと、何か裏があるって、思うんだろうな
実際、自分達が欲しいモノの中にはガルバディアだけではなくガーデンの現状も含まれているから裏があるという考え方が間違いという訳では決してない
それでもどうにも釈然としないというか、やりきれない感じが過ぎる
スコールは、サイファー達の心情を思い、小さくため息をついた

楽しげな表情と、困った様な表情、垣間見える二人の表情
なかなか真実を探る事が出来ない
―――結構手強いじゃねえか
魔女関連の事は確かに理由なんだろが、それ以外にも確実に訳が存在している
何故そう思うか、なんて理由は必要ない
こいつ等の態度が、俺の勘がそう告げている
どっちかっていうと、この餓鬼の方に話を持っていった方が得策か?
……どこから攻めると効果的だ?
サイファーが、効果的な話の切口を頭の中で巡らせるその横から
「それなら……」
キスティスが、話し掛けようとしたそのタイミングで、突如車が急停止した
 
 

 To be continued
 
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