忠告
「ところで、そろそろ目的地につくのだが……」
何とも言えない微妙な雰囲気の中、淡々としたキロスの声が響く
同時に、車はスピードを落とし、ガルバディアガーデンの姿が遠く見える距離で停止する
巨大なガーデンの姿は視認出来るが、向こうからは発見するのは困難な距離、その上視界を遮るように覆う巨大な木々
それほど大した距離ではないが、歩いて行くには中途半端な場所
「おい、おっさん、まだ先じゃねーかよっ」
ガーデンの姿を見上げ、後部座席から身を乗り出しゼルが抗議する
「てめーは黙ってろ」
言葉と同時に、ゼルを押し退けサイファーがドアへと手を掛ける
眉がしかめられ、キロスを睨みつける
「そこで、提案なんだが……」
キロスの手は、“ロック”ボタンを押さえつけていた
「てめぇ……」
殺気だったサイファーを意に介する様子も無く
「一つ引き受けて貰いたいのだが?」
淡々と話し続けた
「くれぐれも、気をつけて行くように」
車を降りた彼等をキロスは見つめる
「聞いた所によると、バラムとガルバディアは仲が良いとは言いがたいようだ」
独り言ともとれるキロスの言葉にはじかれた様に顔を上げる
「どこよりも厳しい、それがガルバディアガーデン、だそうだ」
左手に持った小さな機械を探し出し、前方へと放り投げる
「決して気を許さないことだ」
放物線を描き、機械がスコールの手の中へと収まる
「……わかった」
大丈夫だろうとは思うが、保険を掛けておく事も大切だろう
スコールが機械を見つめ、手の中で転がす
「なに、それ?」
セルフィが、興味深そうに覗き込んでいる
「非常手段…………だな」
特に急ぐでもなく仕舞い込むスコールの様子に、興味深そうだった彼等の視線はすぐに興味を失う
エスタの技術を集めて作成した物であっても、それを知らなければただのたわいない機械に見える
“何か事が起きた時の切り札”それが存在する事を見せる事も牽制の役目を果たす、こともある
まあ、今回の場合は、信用はされている訳ではないが……
不機嫌にこちらを見るサイファーの様子にキロスは思わず苦笑を浮かべる
率先して敵に回る事も無いだろう、こちらが事を起こさない限りは
その点に関しては、問題ないとは思うのだが………
「それでは、デリングシティで待っている」
かつて数々のトラブルを巻き起こした友人の事を思い浮かべ、不吉な考えを振り払う様、内心首を振る
キロスの内心の思いに気付くはずも無く、スコール達はガルバディアガーデンへ向けて歩き出した
ガルバディアガーデンの卒業生は100%に近い人数が、そのままガルバディア軍へと就職する
軍とガーデンは同一の物と言っても過言ではない
様々な進路へと進むバラムガーデンとは根本からして違っている
今回の件も、ガルバディアガーデンが全くの無関係である事は無いのは予想できるが
「大統領と軍の関係は良好とは言い難い」
噛みしめるような呟きが、木々の中に吸い込まれる
ガーデンがどういう動きを見せるか
それで有る程度、ガルバディア軍の様子を知る事が出来る
全てはガルバディアガーデンの出方次第
今後の展開を複数思い描きながらキロスは再び運転席へと乗り込み
「まずは……ラグナ君に報告だな」
デリングシティへ向け動き出した
To be continued
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