魔女


 
「どうやら、今の所はバラムガーデン及びガルバディアガーデンは、ガルバディアと協力姿勢をとっていると言うわけではないようだ」
手に入れた情報から推測するに、それは確かな事だと思う
むしろ、情報から推測するに……
「どちらかと言えば、今現在のガルバディア政府と敵対する方向に事を進めようとしていると、とれなくもない」
窓の外、沿道沿いに続々と人が集まっている
ガルバディアに協力を申し出た、と言う魔女の存在
「ガルバディアガーデンの方は、依頼によって一時的な敵対という立場の可能性もありまね」
オルロワが皮肉げな笑みを浮かべる
そして、ガルバディアとバラムの相違
バラムガーデンからの命令書は、“魔女”の存在を確認して来る事
それも、極力戦闘は避ける事、情報は少なくて構わないから身の安全を確保する事
けれど、ガルバディアガーデンで告げられた命令は
「魔女の暗殺……」
ぽつりと呟いた言葉に、空気が重みを増した
「魔女、か……」
無意識に、オルロワが身を震わせる
「問題はその辺りだな」
そう告げて、キロスは何事か考え始めた

熱を帯びた目
何かを待ち望む、人々の熱気
彼等の口から零れるのは、魔女の事
期待に満ちた声
魔女を待ち望む声
沿道に並ぶ、人々の間を抜けながら
彼等の様子が目に入る
何が、とは言えないが、嫌な感覚が湧き上がってくる
歩く程に変わる場所
場所を変えても続く同じ光景、同じ言葉……
……同じ言葉………
スコールは、思わず歩みを止める
確かに辺りから聞こえてくる言葉の意味は全く同じだ
誰一人として、魔女を否定していない
「……スコール」
歩みを止めたスコールを少し前方から声が呼ぶ
「考え事は後にしろ、はぐれるぞ」
言葉に頷き彼等の元へと慌てて移動する
興奮状態に陥った人々は、些細なやり取りなど目に入っていない
人々の間を抜け進む内に、スコールは、底知れぬ恐怖を感じた

「いつ頃から蔓延っていたのかは知らないが……」
大統領官邸前へと集まった人々の様子にキロスが言葉を漏らす
真剣な眼が、スコール達に向けられる
「これが、魔女の洗脳というやつだ」
辺りに聞こえない様に潜められた声
耳に聞こえた内容に、2人は弾かれたように、視線を向ける
辺りを埋める熱狂的な人々
魔女に反抗的な人々の姿は、無い
「むろん、此処に居ないだけだという考えも否定は出来ないな」
けれど、それだけにしては様子が可笑しい
「居ませんね、こんな時に必ず一人は居るはずの人間が………」
辺りを埋める魔女を歓迎する声
非難の声が聞こえない
すぐ近くで老人が1人、熱狂的に魔女の名を叫んでいる
「事態は思ったよりも深刻な様だ」
キロスの声をかき消す様に、熱狂的な歓声が沸き上がった
 
 

 To be continued
 
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