パレード
車道と歩道の間に設けられた仕切
慌ただしく動く、軍人達の姿
期待に満ちた、どこか歪んだ人々の歓声
パレードが始まる
もうすぐ、その時が訪れる
表通りからは、興奮したような人々の熱気が伝わってくる
道の向こうに見える、目映い光
尋常とは言い難い雰囲気
人の姿の無い裏路地に、スコール達は身を潜めていた
「……嫌な予感、などと悠長な事は言ってられないな」
魔女の攻撃を受け、吹き飛ばされた大統領の姿
モンスターへと姿を変えた2体の彫像
それを歓声と共に受け入れた人々の姿
魔女の力は、随分深く浸透している
「この国を魔女が支配するのに、そう時間は掛からない」
断定された言葉
ぼんやりと声を聞いていたスコールをキロスが覗き込む
「そろそろ気分は、良くなったかな?」
スコールはゆっくりと頷き返す
「さて、予定ではパレードまで見ていくつもりだったが……」
言葉が途切れ、スコールへと視線が向けられる
「少し、場所を変更する事にしよう」
人々の密やかな熱気に背を向け、ゆっくりと歩き出す
「魔女の暗示に捕らわれる訳にいかないですしね」
絶対の存在と信じる様な、そんな暗示に巻き込まれたりしたら目も当てられない
「……かつてのエスタと同じ道を辿らなければ良いが……」
彼等の後を追ったスコールの耳に、囁きが聞こえた
音楽が流れ出す
すぐ側をパレードを盛り上げる踊り手達が通り過ぎていく
人々の間をすり抜け、身体が目的地へと向かう
そして現れる、飾り立てられた巨大な車
視線を上げた先に、冷たい顔をした“魔女”
どこか宙を見つめ、巨大な椅子に座っている
人形の様なその姿に、心臓が一つ大きく音をたてる
知っている気がするから
知っていた筈だから
けれど………
あそこにいるのは、倒すべき敵
さっきの演説、見ていただろ?
きっきの演説、聞いていただろ?
背中を冷たい汗が流れる
作戦開始まで、後少し―――
砂嵐に紛れた映像が、どうにか映し出される
不鮮明な映像
不明瞭な音声
TVに映った1人の魔女の姿
祈りにも似た思いを抱きながら
ほんの僅かな望みを胸に
さりげなく人払いをした室内で、彼は食い入る様に見つめている
荒れた映像が映し出した姿
不愉快な音に紛れて聞こえる声
知っている存在
始めて見た存在
「………始まってしまいましたか………」
零れ出る雑音に、絶望に沈んだ声がかき消された
To be continued
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