暗殺


 
騒々しい程の音楽が聞こえる
街中をパレードが進んでいく
スコールたちは、通りを見下ろすホテルの部屋へと戻ってきていた
古びたTVは、不鮮明な映像がパレードの様子を映し出している
「もうそろそろこの前を通る筈だが」
窓辺に座り、外の様子を眺めていたキロスが誰にともなく言う
見えるはずのない場所から、スコールはなんとなく窓の外へと視線を向ける
窓の外から音楽が聞こえてくる
「この辺じゃ、何も起こらないとは思いますけどね」
言い訳めいた言葉を口にしながら、窓辺へと足を運ぶ
何も……
オルロワの言葉に、スコールは反射的に立ち上がる
“魔女の暗殺”
ガーデンで聞いた、言葉
SeeD達に、彼等に命じられた指令
遠方からの“狙撃”という手段をとるとはいえ……
「魔女を暗殺するって……」
スコールの声を遮るかの様に、外から聞こえる音楽が、歓声がひときわ高くなる
「“魔女”を殺す事は不可能だ」
眼下を過ぎるパレードを見つめたまま、キロスが言った

「さすがに、パレードって奴は見れないか」
デリングシティに在住している諜報員の1人が送って来た情報に、“魔女のパレード”の事があった
TV放映を行うというその様子も、さすがに遠くエスタの地までは届かない
ラグナは、何も映し出さない画面から目を離す
手の届かないところで事態は急変している
各地から届いた報告書へと、目を落とす
それも、良くない方向に進んでいる
報告書に書き連ねられた懸念、そこかしこに見える“ガルバディア”と“魔女”の文字
「まだ、ガルバディア全体に魔女の支配が行き渡ってるってわけじゃないみたいだけどな……」
詳しい事はまだ分かっていないが、どうやら軍部の方に反対派が存在しているようだ
だが、それも時間の問題だ
じきに国全体が魔女の術中に捕らわれていく
そして正気に返った頃には、何もかもが手遅れになる
かつてのエスタの様に………
「……どうしますか?」
考え込み、じっと黙り込んでいたラグナへと、補佐官の1人が声を掛ける
「………ん?ああ………そうだなぁ………」
何かを諦めたような、どこか期待しているかの様な視線をすぐ側から感じる
期待されたら答えたくなるんだけどよ
その前に、さ
「一つ確認したいんだけどな……」
念のため、だけどな
真剣な表情で、ラグナは小さな質問を発した

軋んだ音と共に、鉄格子が落ちる
鮮明な映像の中で、驚いた様な魔女の顔が映し出される
息を飲む、スコールの視界に
椅子から立ち上がった魔女が緩慢に右手を振る姿が見えた
そして………
再び荒れ始めた画像の中で広がる不可思議の力
映像の向う側から騒ぎ立てる人々の声が聞こえる
そして、冷たい笑みを浮かべる魔女の姿
音を立て、魔法の光が消える
「不味いな」
室内にキロスの声が響く
何がおきたのかハッキリと見る事は出来なかったけれど、SeeD達が行動開始した事は予測出来る
そして、作戦は失敗した
重苦しい空気の中、流れ続ける映像の中に、武器を手に魔女へと迫る少年の姿が映し出された
「サイファー!」
映像が戦いの様子を淡々と流しだして行く
そして、魔女へと迫ったその身体が、魔法の力に貫かれた
 
 

 To be continued
 
Next