現在地
周囲にあるのは、
密やかに集められた機密情報
他国の人間どころか、同国の関係者でさえも知らされていないような情報が集められる
『人が関与する以上極秘に済ませる事は決して出来ない』
過去、幾度となく聞かされた言葉
聞かされる度に理解したつもりになっていた
だが、実際にこの状況を目の当たりにして、正直驚いた
『これ以上の情報は、残念ながら今は手に入らない』
途切れた言葉が時間を置いて続けられ
『ウォードが来るまでは、だが……』
楽しげに光る目が見つめた
エスタからこの地までの移動にはそれなりの日数が掛かる
だから、待っている
今後の事を相談し、様々な手段を講じながら
最後の決定的な情報が訪れるのを待っていた
目に映ったのは、無機質な金属
むき出しのままのコンクリート
そして、遙か高く位置する天井
そこをうねるように這う金属製のパイプ
……なんだぁ?
あちこち痛む身体を起こしながら、ゆっくりと辺りに視線を投げた
だだっ広い空間に、知っている顔が、1つ、2つ………
力無く横たわるその姿に、ようやく現状が把握出来た
―――冷たく笑った、魔女の姿
最後に見たのは、魔法の光
そしてこの状況からするに
自分は、負けた
手も足も出ない程に敗退した
そして、自分以外のこいつらがここにこうして転がっているという事は
―――任務失敗
「くそっ」
振り落とした拳が鈍い音を立てた
一度も破られた事の無い強固な砦
どうやらそういうモノは、
今までが大丈夫だから、これからも大丈夫
等といった幻想を生み出すらしい
莫大な費用を掛けて建造したモノだから、早々改築するわけにいかない事は解っている
だが……
ウォードは、ことさらゆっくりと左右に首を振った
デリングシティ到着後、有無を言わさず連れて来られた場所は酷く懐かしい場所だった
楽しげなキロスと目が合い
話しをする迄も無く見せられた内部地図
『何一つ変わったところがないな』
とは言っても、ウォードが知っている範囲はそれほど広くは無い、制御機械の一つや二つは変更されているかもしれない
『稼働時間の方はどうなっている?』
「遠くから見張った程度だが……」
特殊な作りになっているこの建造物は、地上にいる時間と地中にいる時間が存在する
地中に存在する時間の間は、たとえ何が起ころうとも決して浮上する事は無い
地上にいる時間であっても、何らかのトラブルがあればすぐさま地中へと姿を消す
手渡された小さな紙面に、小さく殴り書きされた幾つかの数字
『……………』
記憶のどこかに眠っているソレをゆっくりと呼び覚ます
『………………』
細く長く吐き出される吐息
『その辺に転がっていると思うんだがな……』
そう言ってウォードは、古びた室内へと視線を向けた
To be continued
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