窓一つ無い、巨大な要塞が姿を現す 遠く離れた場所でさえも、足下の砂が流れ、足を取られる 辺りは、身を隠す事も出来ない砂漠 警戒を怠ってさえ居なければ、この地程攻め難い場所も無い 「自慢の要塞といった所か……」 どこか馬鹿にしたように聞こえる口調 遠目に見える建物の近くに、車を止め、カメラを向ける一団が居る 『自慢の品なだけに、誰彼と無く自慢したいのだろう』 「誉められた行動ではないが、こちらからしてみれば好都合だ」 ただの観光客として、近くまであっさりと近寄る事が出来る 「さて、後はいつまで大人しくしていてくれるかという所だな」 発掘したタイムテーブル通りに、砂の上に姿を現した だが、それと同じだけの時間、地上に姿を現して居るとは限らない 目立つ行動を取るつもりは勿論無いが、相手がこちらの都合通り動いてくれるとは限らない 騒ぎが起これば当然彼等だって、手を打つだろう ―――退路を断つ 侵入者を捕らえる上で、一番重要な行動 あの建物はソレを容易に実行できる 砂の中に沈みさえすれば、何処へも逃れる事は出来ない 決して気付かれる事の無いよう慎重に行動しなければならない 物珍しげに、見上げる一団の中へと何食わぬ顔で紛れ込む あまりにも当たり前の日常になっているのか、中からの視線は感じない ただ見ている事に飽きたのか、見物客は次第に側を離れ始める さりげなく視線を交わし、別れ、建物を回り込む 正規の入り口の他に設けられた小さな勝手口 完全に浮上した際に地上に接する場所に現れるソレは、この施設内での細々とした仕事に従事する者達の為の勝手口 扉を開ける為のキーが、未だに同じものだという可能性は低い かつては存在しなかった軍人も今はいる可能性がある とりあえず、といった気持ちで近づいた扉が、軋んだ音を立てて開いた 柔らかな夢をみた
「気が付いたか」
To be continued
|